Ⅴ
「これ、なんですけど……。プレイしてみますか?」
夏海が出してきたのは、『異次元メモリー』と書かれているプラスチックの箱。恐らくゲームソフトなのだろうと思う。
まあ、そんなに可笑しくはなさそうだな。
タイトルから考えると、異次元での物語なのか。表紙には暗い森のような背景と、可愛らしい少女のイラスト。
普通の冒険者か何かだと俺は判断した。
「これに夏海が出てるの? じゃあ、ちょっとだけやってみるよ」
俺がそう言うと、夏海の笑顔が更に明るくなる。
素直に喜びを表している表情だと思う。夏海はかなり分かり易い子だからさ。
「そうだ! お兄ちゃん、夏海がどのキャラか当ててみて下さい」
ニヤリと笑いながら、元気良く夏海は言った。
我が妹の声、聞き分けられない筈がなかろう。
一番聞き慣れている声を選べばいいだけ。夏海はいつも夏海な声だし、そんなに変わるとも思えない。
「分かった、いいよ。絶対当てるからな」
俺はゲームを渡され、気合を入れてやり始めた。さて、夏海はいつ出るのだろうか。
「夏海のデータありますが、お兄ちゃんには新しいデータで始めて貰いましょう」
夏海はゲームを手慣れた手つきで操り、少しすると俺に戻した。画面には、名前を入れろと書かれていた。
別に本名で大丈夫だろう。インターネットに挙げる訳でもないのだから、無駄に名前を考える必要もない。
俺は冬樹と入れた。
その後もなんだかんだ色々と入力していったので、始めるのは十分後ほどになってしまった。