ⅤーⅦ
~甘くて苦い恋のちょこれーと~
『ここは、二人のイケメンショコラティエが営業しているお店です』 夏海
『そんな噂のお店、皆も一緒に覗いてみようよ』 唯織
二人は普通に地声と思われる声で、曲の前奏が終わったあたりに喋り始めた。
『唯織、今日もお客さんたくさん来て良かったね。今日は癒し系ショコラティエ担当の、園田夏海です』 夏海
しかしいきなり男の娘というような声の夏海が、そうやって言い出した。うわっ、ビックリしたな
隣で夏海本人は、顔を赤く染めている。いくら夏海とは言え、これは恥ずかしいらしい。
『そうだな夏海、じゃあ今日も新メニュー考えようぜ。今日は俺様系ショコラティエ担当の、双葉唯織です』 唯織
もっとビックリしたなあ! 唯織さんなんて、完全にイケボで喋り始めた。ちょっと待って、これ本当に唯織さんなんだよね。
『今日もお客様から手紙が来てるよ、美味しいチョコの秘密の隠し味』 夏海
タイトルコールらしく、夏海が男の娘ボイスのまま言う。
『フィディさんからのお手紙です、ありがとうございます。イケメンショコラティエのお二人に、カッコ良く言って欲しい呪文です』 唯織
唯織さんも変わらず、物凄いイケボのままメールを読む。いやいや、唯織さん滅茶苦茶カッコいい。
『カッコ良く? えっ、これ夏海が読むんですか……。それじゃあ唯織、まず僕が試してみるよ』 夏海
多少地声で話していた気がするが、夏海はまたやはり男の娘ボイスで喋っていた。女の子とか男じゃなくて、男の娘感があるね。夏海プロだ、むっちゃ凄い。
『美味しくな~れ、萌え萌えキュン』 夏海
えっ? よくまあそんな台詞、男の娘のまんま読めるね。地声は可愛い女の子なんだから、可愛い台詞だったら可愛くなっちゃうでしょ普通。
隣の夏海はもう恥ずかしくなくなってきたらしく、いつも通りドヤ顔をしている。
『キャー、やっぱりイケメンだね』 唯織
最初読んでた普通の地声で、唯織さんは棒読み気味に読んだ。わざと、完全にわざとだよね。
『イケメンってかさ、メチャ可愛いねんやけど。なーちゃんっぽい可愛いじゃないけど、イケメンじゃなくて可愛いでしょ? これは。でも台詞が、久しぶりに単純だね』 唯織
うわっ! これが地声だ。これは完全に唯織さんだ、台詞って感じも全くしないや。
『もう一つ試してみよっか、今度は唯織の番だよ。チョコ食べたいさんからのお手紙です、夏海も食べたいなあ。これは唯織さんのカッコいい声で読んで欲しい呪文です、ハート』 夏海
この男の娘(我が妹)は、ハートって言うのを読むんだな。まあ書いてあったんだろうけど、口に出して読む言葉な気がしないなあ。




