ⅤーⅥ
「お兄ちゃんお兄ちゃん、早く上行きましょうよ。夏海の部屋に来て下さい」
お皿を片し終わると、夏海は俺の手を引いて階段を駆け上がって行く。来て下さいも何も、無理やり連れて行ってるじゃないか。
「今度は何するんだよ……」
俺にだって、宿題と言うものがあるのだが……? だからあんまり、夏海の部屋でゲームばっかりしている訳にはいかない。
「あのですね、ライブ映像を見て貰おうと思うんですよ。アニメとかのイベントでのライブですから、ショコラティや夏海以外にも出ていますけどね」
ライブは六回しかとか言ってたけど、そういうのも全部含めてってことなのかな……? いやライブやったことないし、どんな感じなのか分かんないけど。
俺は部屋に連れ去らわれて、四本ものライブ映像を見せられた。まあ、可愛かったからいいんだけどさ。ただ今の時刻は午後六時過ぎ。
「あと二つは、DVD化していないんですよ。だからお兄ちゃんに見せてあげられなくて、凄く残念です。……ご免なさい」
別に謝ることじゃないと思うけどね。夏海悪くないし、夏海全く悪くないし。
「大丈夫だよ、しゅんとしてないで? それにこれからは、生で見ることもあるかもしれないんだしね」
ライブチケット、その為にファンクラブとかあるのかな? そんなことないよね。
「来てくれるんですか? わ~い、お兄ちゃん大好き♡ お兄ちゃんもライブとかするかもしれませんが、夏海は絶対絶対に行きますからね」
いきなり満面の笑みになって、夏海は俺の後を踊るようについてきた。
「俺はライブやるつもりないよ」
学校生活の中で、夏海の応援を頑張る。俺はこれで限界、俺はこれで十分。
「出演依頼が来ても?」
それって、俺のライブじゃないよね? ゲスト的な、そんな感じじゃね?
「依頼が来たらやるさ。でも……、依頼なんて来ないと思うよ? 来たとしても、夏海がやるときくらいでしょ」
その後は特に会話もなく、それぞれ作業を進めていった。夕飯作りとか風呂とか、俺は宿題とか勉強とか……。
土曜日に遊び過ぎて、日曜日の夕方になってから慌て出すなんて……小学校低学年みたいだろ? でも俺達は、そんな幼いままが楽しいからいい。
そしてラジオが始まる時間までに、何とか予習までもやり遂げて見せた。




