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「分かってます」
そう言いながらも夏海は、急いで食べてやっぱり咽た。言わんこっちゃないな。
「分かってないじゃないか、ほら気を付けて」
「ケホン、気を付けます」
しかしその言葉をもう忘れたのか、夏海はまた急いで食べ始める。そして俺はまだ半分も食べていないと言うのに、完食してしまったようだ。
「ごちそうさまでした、お兄ちゃんも早く食べちゃって下さい」
だ~か~ら~、何で俺にまで急がせようとするかね。急がなくてもいいでしょ? って言ってるのに……。
「少し待ってろ。てか夏海、宿題とかも出てるだろ? 今のうちにやっちゃいな」
すると夏海はとても不満そうな顔をしたが、渋々という様子でも頷いてくれた。
「はい、分かりました。お兄ちゃんが食べている間に、天才夏海は宿題を終わらせてみせます。えっへん」
全く、やっぱり可愛い奴だな。
「そんなこと言ってないで、もうやり始めたらどうだ? 食べている間に終わらせるんだろ」
決してそんなこと、口に出したりしないけど。
「はい、当然です」
でもやっぱり思うんだ、可愛いなぁって。思わずにはいられない、だって可愛いんだから。
夏海はバタバタと階段を駆け上っていき、暫くするとノートや筆箱を抱えて下りてきた。そしてわざわざ俺の隣に座り、ノートを広げていく。
……邪魔だな……。
「夏海、食べてる隣じゃ勉強しないよね? ほら、せめて反対側でやろっか」
俺がそう言うと夏海は、素直に向かい側の席に移動した。何がしたかったんだか……。
「お兄ちゃん、夏海の早業見てて下さいね」
しかしそんなこと言われたって、宿題をやっている様子を見るつもりなどない。俺は夏海のことは気にせず、普通に食事を続けていた。
「ごちそうさまでした」
俺もやっと食べ終わり立ち上がると、夏海もシャーペンを置いて立ち上がった。
「お兄ちゃん、今食べ終わりましたよね? いぇ~い、間に合いましたよ」
どうやら夏海の宿題も終わったらしい。中学校って、そんなに宿題少なかったっけ? それとも今日たまたま少なかったとか、金・土曜日とかにやったとか? って様子もなかったよね。
まあ、夏海の早業なんだよな。そうゆうことでいいだろう、どうでもいいし。
「はいはい、頑張ったな」
適当にそう言っておくと、俺は皿の片付けに入る。
「あっ、夏海も手伝いますよ。お兄ぃちゃ~ん♡」
手伝いとかいらないんだけど、夏海が折角そう言っているので何かをして貰うことにする。
「んじゃ、皿運んで。今は洗わないから、置いといてくれればいいよ」
食器を洗うのは夜、食器を洗うのは食洗機。だから別に、やること殆どないんだけど。




