ⅤーⅣ
「初めて声優をやったのは、八歳の時になりますね。でも声優になったのは、十歳の時だと思います。ほらお兄ちゃん、夏海がずっと子役やってたのも知りません? 三、四歳の時からずっとなんですけど」
何それ、超知らないんだけど。三歳!? 嘘でしょ、全然知らなかった。
「へえ、そんなに長いんだ。知らなかった……」
三歳から九歳までは、普通に子役やってたってこと? んで十歳でもう、声優に行っちゃったんだ……。
夏海は今十四歳だから、芸歴で言ったら十年以上か。声優としては、五、六年になるのかな? 物凄くビックリ情報だ、スパゲッティのこと忘れるところだったよ。
「えっ? 知らなかったんですね。子役時代のことも知らないんじゃ、本当にアリスちゃんが来たときびビックリしたでしょう。声優以前に、芸能界のこと知らないんだったらんですもんね。夏海、てっきりお父さんに訊いてると思ってました」
本当に全くだよ、全くもって聞いてなかった。父さん、俺に何も知らせてくれてないよ。
「うん、ビックリしたよ。マネージャーって何? 声優って! って感じだったもん」
そんなことを夏海と話しながら、スパゲッティを盛り付ける。
「はい夏海、これでいい?」
「はい、超OKです。滅茶苦茶嬉しいです、ありがとうございます。お兄ちゃん大好き」
俺が夏海の前にお皿を置いた途端、夏海は更に笑顔になってとっても喜んでくれた。
「いただきま~す☆」
パクパク夏海はスパゲッティを頬張る。
「そんなに急がないで、ゆっくり食べればいいだろ? いただきます」
そんな夏海を眺めながら、俺もスパゲッティを食べ始めた。
別に眺めるって言っても、「子供だな~」的な視線でだからな? 可愛いと思ったとしても、子供なその表情がってことだからな。俺はシスコンじゃない、間違えないようにしましょう。
「ん? お兄ちゃんどうかしたんですか」
口の中の物を無理やり飲み込んで、夏海は不思議そうに訊いてきた。ゆっくり食べろって言ってるのに……。
「いいや、別に何でもないよ。だからさ夏海、落ち着いてゆっくり食べたらどうかな」
そうやって嬉しそうにしてくれるのはいいけど、あんまり急いで食べる必要ないでしょ。別にゆっくりだとしたって、誰に取られることもないさ。
いつも咽たりするんだから、良く噛んで食べましょう? 小学生の時からそう言われてたでしょうよ。




