ⅤーⅠ
「え~、まあいいでしょう。仕方ありません、お小遣いもありませんし。でもまあおすすめを差し上げて、何とかお兄ちゃんを夏海教信者にさせて見せちゃいますよ。おーっほっほっほ」
……え? おーっほっほっほって、そりゃないでしょうよ。その役はさすがに、夏海の声に合ってないんじゃないかな。
「これですこれ、夏海の一番のお気に入りなんです」
ジャーンと夏海が見せてきたのは、夏海と唯織が可愛らしいエプロンを着てチョコレート作り? っぽいことをしてる写真。
何だろうこれ。下敷きとか、なのかな? 多分そうだよね、多分。
「夏海もいおも学生ってことで、ショコラティエには文房具が多いんですよ。まあ、夏海たちがお願いしましたからね」
確かに可愛いんだけど、可愛いんだけど! でもさ、文房具として使えないじゃん。アイドルでも十分きついけど、声優の方がきついよね。
「そっか、じゃあそれを買う?」
「はい☆」
夏海はその下敷きを手にし、次を探しに掛かった。って、まだ買うんだ。
「夏海、それを買えばいいよ。そんなに沢山は大丈夫」
その下敷きだって、358円もするんでしょ? 大丈夫大丈夫、あまり買い過ぎはよくない。
「これだけじゃさすがに、少ないじゃないですか。もっと買いましょう、夏海教信者を増やす為です。夏海教の教え、グッズは集めるべし」
んなこと言われてもな……。まあ大人だとすれば、全部一気にでも買える量だけどさ。学生じゃキツイよ、夏海なんか中学生なわけだしさ。
「じゃあもう少し、もう少しね。あんまりヲタク部屋には、したくないからさ……」
そこら中にポスターが貼ってあって、机の上はフィギュアでいっぱい……とかまでいっちゃうと嫌じゃん。それはさすがに、止めたいもんね。
「じゃあ、これはどうですか? 夏海の写真とかはないんですけど、一応声優ですので声を聴いてもらいたいと思うんです」
知らないキャラクターだったのだが、押すとそのキャラクターの声がする的な奴だろう。
「まあそれくらいなら、別に買ってもいいかな。お金は俺が払うよ」
妹に全部お金を払わせるってのもね? 少しくらいは俺も、ちゃんと払わないとダメでしょ。
「お兄ちゃんが? でもまあそう言うなら……」
ニコッと笑って夏海は、それも手に取った。そして、また何かを選ぼうとする。まだ買うの? どんだけ買うつもりでいるんだろう。




