ⅣーⅥ
夏海たちの邪魔にならないように声は出さなかったのだが、いかにも応援しているよ風に頑張っていた。何これ、疲れるわ。
「お兄ちゃ~ん、応援ありがとうございます。物凄く必死に応援してくれてましたね、夏海物凄く嬉しかったですよ」
休憩になると夏海は、瞬間移動したんじゃないかというスピードで俺の目の前に現れていた。それか、壁をすり抜けたとか? だってさ、そうじゃないと可笑しいって。
「冬樹さん、応援良かったですよ。才能あるんじゃないですか?」
相変わらず唯織さんは、よく意味が分からないな。でもまあ夏海とユニット組むくらいなんだから、一般人じゃ無いとは思ってたけど。
「応援の才能って何だよ」
取り敢えず俺は、一応ツッコんでおいた。言ったのが夏海だったら、スルーしていたかもしれないな。
「応援をする才能ですよ、分かりませんか?」
えーっと、唯織さん? そのまま過ぎて、説明も何もないよね。そもそも応援ってさ、才能なんてなくね? 普通。
「まあ当然です、だって夏海のお兄ちゃんですもん。超絶可愛い夏海の、超絶イケメンお兄ちゃんですもん。どんなことの才能も有りますよ、だってお兄ちゃんですもん」
自分で超絶可愛いって、さすがの夏海もそこまでじゃないと思ってたんだけどな…。それとどんなことの才能も有るとか、超絶イケメンとか言わないでくれるかな? 本当にそう言うの、止めて欲しいんだけど。
「ほらなーちゃん、冬樹さん嫌そうな顔してますよ? 本当は無能な人に対してあんまり、完璧とか言わないであげて下さい。嫌味になりますよ、可哀想じゃないですか」
「「ちょっと待った!」」
唯織さんがあまりにも酷い扱いをするので、さすがの俺も少し抗議しようと挙手した。まだ喋ろうとしていた唯織さんを止めた俺の声は、完全に夏海と重なっていた。
「二人とも何か言いたそうな顔ですね、一人ずつ聞いてあげましょう。まずは夏海さん、どうぞ」
更に拍手まで加えて、唯織さんは笑顔で夏海にふる。
「お兄ちゃんは本当に完璧な人です、本当は無能ってどうゆうことですか? お兄ちゃんの才能、いおだって認めたじゃありませんか! ホントのホントに、お兄ちゃんは神のような存在なんです! バカにするんだったら、いおだって許しませんよ」
えっと、神とまでは言わないで欲しかったな。大体この二人さ、俺のこと無能呼ばわりするのと神扱いするのだろ? ちょっと、極端すぎるなあ。




