ⅣーⅢ
「ほら、電車来ちゃうわよ? 少しくらい急いだらどうなのかしら」
アリスちゃんは、俺達をおいてさっさと行ってしまう。
「ちょっ、待って下さい。お兄ちゃん、行きますよっ」
夏海は俺の手を握り締め、いきなりダッシュした。ちょっと驚いたが、俺はそのスピードに合わせて走る。しかし…。
「あれ? 時間間違えてたみたいね。あと六分、ここで待ちましょう」
何だってぇ!? 折角急いで来たのに、猛烈ダッシュで来たのに…待たされるなんて…。そんなの酷い、酷過ぎるよ。
「まあ、間に合わないよりは良かったんじゃないですか? それじゃあお兄ちゃん、待ち時間には…」
パコーン
俺とアリスちゃんのハエ叩きが、同時に夏海の頭を叩き綺麗に音をはもらせた。
「うぅ、痛いです。二人して叩かなくたっていいじゃないですか。それに夏海、まだ何も言ってませんもん」
頭を押さえて涙目で、夏海は俺達二人を睨みつけてくる。
「夏海さん、どうかしたのかしら? 時間を間違えたことは謝ったんだし、そんなに睨み付けることないじゃない」
本当にアリスちゃん、謝った? 謝ってない気がするけど、睨むほどのものじゃないじゃん。誰だって間違えることはあるんだからさ。
「時間を間違えたことになんて、夏海は怒っていませんよ。ただ夏海は、どうして叩くのかと聞いているのです」
叩くって、何のことだろう。アリスちゃん、いつ夏海のことを叩いたのだろうか。
「こら夏海、訳分かんないこと言っちゃダメでしょ。アリスちゃんだって困ってるよ」
しかし夏海は、中々謝ろうとしてくれない。
「夏海! アリスちゃんに謝らないとダメでしょ、ごめんなさいは?」
全く、夏海はもっと素直な子だった筈なのに…。
「お兄ちゃんまで、叩いた記憶を抹消ですか? でもまあアリスちゃん、お兄ちゃんも、睨んだりしてごめんなさい」
あっ、ちゃんと謝るんだ。納得がいかないような顔だけど、ちゃんと謝るんだ…。
「別に私だって怒っていないわ」
おお! 何だか凄い、アリスちゃんがいい子に見えてきた。
「じゃあ仲直りだね、夏海も謝れて偉いぞ」




