ⅣーⅠ
プロって言われても、昨日初めてやったばっかりな訳だしな。
「五月蝿いな、認めてあげたんだからいいでしょ? じゃあ夏海は、どうして欲しいのさ」
何をして欲しいのか、いまいち分からない奴だな。せっかく頑張って主張してたから、俺はそれに同意したと言うのにさあ。
「もっと感情を込めて下さい、本当はお兄ちゃんの本当の気持ちなんですから。だってプロであるお兄ちゃんには、そうやって本心を隠すことだって出来る筈でしょう? きっとそうしたに決まっています」
おお! 新しい発想だな。まあめんどくさいから、ここまで言われるとスルーしたくなるよな。
俺はパンを食べ切って、席を立った。すると夏海が、俺の手を引きとめた。
「ちょっと待って下さい、ねえお兄ちゃん」
それくらいはいいか、仕方がない。どうせ夏海だって、もうすぐ食べ終わるんだろうからさ。
「分かったよ、食べちゃいなさい。でも危ないから、急ぐ必要はないからな」
急いだりして、夏海はよく咽たりするんだからさ。中学生にもなって、それくらいも分からない子なんだからさ。
「そうですか? ありがとうございます」
そう言いながらも、夏海はさっさと急いで食べて行く。そして予想通りに、夏海は咽てしまった。
「言ってるだろ? 急がなくていいってば」
「けほん、はい。こほんこほん、分かってます」




