Ⅱ
「今日はお兄ちゃんのバースディイベントというわけですが、こうしてイベントに出ることはありませんから、初めてお兄ちゃんの神々しいお姿を見て感動している方も多いのではないでしょうか」
やはりプロの司会がいて、夏海はゲストでは言ってくれた方が良かったのではないかと思うような進行だ。
ツッコみたくて仕方がないのだけれど、一々夏海の言葉を拾っていたら何も進まない。
「早速最初のコーナーに入りましょう。誕生日パーティということで、ゲームをやるみたいです。ボードゲームっていうんですか? 夏海はあまりこういうの詳しくないんですけど、そういうカードゲームみたいな奴です」
「奴とか言っちゃ駄目だろ。リハーサルと称して家で二人でやったときには大爆笑だったんですけど、見てる方が楽しんでもらえるかどうか。温かい目で見てもらえると嬉しいです」
スタッフさんが用意をしてくれている間、夏海に誘導されながら軽いトークをして、舞台上で兄妹によるゲームがスタートした。
始まってしまえば集中してしまって、これは良いこととは言えないんだと思うけれど、トークというところまでは意識がいかなくなる。
夏海が盛り上げてくれるからという安心感もあったんだろう。
「お兄ちゃん、こういうとき容赦ないですよね。みんな見ているんですから、ちょっとくらい手加減をしてくださいよ! だってだって、夏海が下手みたいに思われたらどうしてくれるんです?」
ゲーム終了後に夏海にこんなことを言われるくらいには、二回やらせてもらったけれど両方とも俺は本気でプレイした。
家でやったときにも俺の完勝だったからシンプルに夏海が弱いんじゃないかというところもあるが。
「夏海が下手なんだよ。元々夏海はこういう、心理ゲームっていうの? は苦手じゃん」
「えー、なんでこんなとこでそんな恥ずかしいこと暴露するんですか! お兄ちゃんのえっち!」
「そんな恥ずかしいこと言っていないから。というかちっともえっちじゃないだろ」
久しぶりにハエ叩きでも使いたい気分になったけれど、どっちにせよステージ上でやるようなことではない。
これだけ夏海がべったりでいてくれているのにそんなことをしたら好感度がだだ下がって終わりだ。夏海の人気を考えてもそうなる。
「続きましては? こっちの台本には入っていないんだから夏海がちゃんと進めてくれないと、変な空気になっちゃうから」
ありがたいことにファンというような存在でいてくれているからというところでもあるのだろうが、単なる兄妹の会話で楽しんでくれている人がいる。
でもそれに甘えすぎるのも違うのでこちらから夏海に進めさせる。




