ⅢーⅦ
自らの手で終わらせようとしているのだ。これでどこまで終わってしまうかは分からないのだ。
下手したら、夏海との仲が駄目になるだけでなくて、仕事だって駄目になってしまうかもしれない。
どれだけ唯織さんが真面目に、命を懸けて仕事に取り組んでいたか。どれだけ自分の仕事に誇りを持って、大切にしているか。
そして唯織さんがどれだけ夏海のことを好きでいてくれているか。
今の唯織さんはどこまで覚悟をして、言葉を発しているのだろう。
「どうしましょ、どうしましょう。頑張りますよ。頑張って、ちゃんとなーちゃんにも話します。一番連れて行っちゃ駄目って言ったように、もう、甘えませんから! 一緒にいたら甘えちゃうと思うので、なーちゃんと二人になるんです。それで、なーちゃんと二人でお話するんです。逃げ道をなくして、ちゃんとお伝えするんです。あの子は優しいので、あんまり怒鳴り付けてなんてことはしてくれないと思うんですけど、許してくれるようなことは望ましくもないのに、してくれちゃうかもしれないとも思っていて、ああぁそういうところがまた素敵なんですよね。でも、頑張りますから」
頭を抱えて、涙ばかりはどうにか堪えているようではあるけれど、唯織さんも感情を抑えられないといった様子であった。
さすがの唯織さんでも、ここまでが演技というようなことではないのだろう。
「そういうところがまた、素敵なんですよ」
崩れ落ちて俯いて、顔は隠しながらも、唯織さんはそう繰り返した。
「本当にあんなに可愛い子は他で見たことがないから、仕事仲間、ビジネスパートナーって自分の中で言い続けていたんですけれど、こんなになるまで止まらなかったんですもん。馬鹿ですよね。兄妹だけあって、ちょっと面影あるんですかね? 慰められたらきっと、なーちゃんの代わりにするように、心の拠り所として好きになってしまうかもしれません。から、だから、すみませんでした。今日のところは帰ってください。拘束してしまって、本当にすみませんでした……。妹を怖がらせてしまって、すみませんでした」
顔を見せようとしないのは、声からは全く伝わってこないけれども、唯織さんは……泣いているのだろうか。
こんなときにも声色には全く出さないだけで、唯織さんは、本当は冗談なんて一つも言えないくらいに。
彼女がしていたことを考えたら、自業自得だと言えることだろう。
被害者は夏海の方だ。
けれどどうして唯織さんがこんな顔をしなければならなかったのだろうかと、思ってしまう気持ちもある。
唯織さんは悪いことをしていた、当然の報いだ。
「頼めばいくらでも写真くらい撮らせてくれただろうに」
思わず漏れた呟きが、彼女に聞こえはしなかったことを祈る。




