ⅢーⅥ
「お兄ちゃ~ん! はいどうぞ、すぐ聞いて下さい。夏海のファーストシングルです、絶対メロメロです」
バタバタと階段を下りてきた夏海は、手に数枚のCDを持っていた。その中の一枚を、見せつけるように俺の目の前に出してくる。
そこに映っていたのは、どこかの女王様のようなドレスに包まれた夏海の姿だった。ティアラにもドレスにも、花柄が多く見られる。背景は、豪華でロイヤルな部屋。そして端っこに小さく、『ロイヤルな一日 園田夏海』と書かれていた。
「これがセカンドシングルです」
今度は別のCDを、俺の目の前に差し出してきた。白いレースのワンピースに身を包まれ、綺麗な星空を見つめる夏海の姿が映されている。先ほどとは違って真ん中より少し下のところに大きめの文字で、『夜空の下で 園田夏海』と記されている。
その後も歩きながら、夏海は次々にCDを見せてくる。
確かショコラティエでは、アルバム一枚にシングル四枚って言ってたよな。でもその他に夏海のソロで、結構枚数出してるのだろうか。
「どうですか、どうですか? 凄いでしょう、夏海のこと見直したでしょう」
本当に夏海は、喋らなければ綺麗で可愛くて優秀なのに。どうしてこんなことを、言うんだろうねえ。
「今日もお兄ちゃんに、夏海の出演ゲームをクリアして貰います。バンバン、攻略しちゃってください。攻略してラストを迎えればもっと可愛い台詞が出るのに、いつも途中で次のゲームに行っちゃうんですもん」
今週はずっと、夏海が出してくるゲームをやっていたりする。だから全然寝てなかったりもする。毎日睡眠時間二時間だぜ?
「まあ取り敢えず、全部少しずつ聞きたいと思ってさ。あとでゆっくり、進めさせて貰うね」
俺は笑顔で、夏海を適当にあしらっておく。
「あっ、お兄ちゃん♡ もう夏海の攻略は成功です、さあさあイケないところへ行っちゃいましょう」
夏海は俺の腕にしがみ付いて、すりすりしてくる。くすぐったいなあ、凄い邪魔なんだけど。
「唯織さんとの、共演作品とかはあるの?」
今回撮影に行った作品は、共演って言ってたしさ。それにそれで、主題歌歌うとかも言ってた気がするし。




