ⅢーⅡ
大きく深呼吸をして唯織さんは言った。
「なーちゃんのストーカーの犯人はここにいるんです。これで解決、ですかね?」
どうして自分でこんな他人事みたいに言えるのだろうか。
彼女はにっこりと、にこにこと笑っている。
「もしなーちゃんに覚られてしまっていて、それがなーちゃんを怖がらせてしまっているのだとしたら、自首しようと思います。今ここでこうして話しているように、なーちゃん本人にもちゃんと話そうかなって思うんです。それで大好きななーちゃんにどう思われるか、それが怖くてなりませんが、自業自得ですもん。自分が蒔いた種ですもん。ときが来た、としか思いませんよ……はい」
声色は悲しみに満ちていて、眉はどんどん悲しそうに下がるけれど、彼女はやはり笑おうとしている。
「もし、もしですけど、警察に相談してしまっているのなら、それでも自首しようと思うんです。なーちゃんがどれくらいの人数に話しているかによりますが、全員に一人一人説明して、それくらいの覚悟はあるんです! だからっ、その、だけどね……、一番最初に話しているのですし一番説明したいと思うのです。……あれ、言葉が纏まらなくて、駄目ですね。話すって決めて、全部全部話すって決めたから、どうやって話すかもなんとなく決めてきたんです。なのに、思うように言葉が出てこなくて駄目ですね……」
いつも余裕そうな唯織さんでも、そうなるときはあるのか。
ずっと余裕そうに見えたけれど、やはり唯織さんでも言葉に詰まることはあるらしい。
……それだけじゃない。
笑顔の唯織さんではあるが、瞳に薄らと涙が浮かんでいるようだ。
「どうやってあの美少女と出会ったのか、どうしてあの美少女にここまで惚れることになってしまったのか、そこから話すべきでしょうか。馴れ初め、って言っても」
「駄目ですね」
ちょっとふざけて彼女は笑い直そうとしていたので、咄嗟に俺もツッコミを入れる。
いくら自分の感情を整え直す為のことだったとしても、自己完結させておくのは気が引けた。プロとして働く姿を見せて貰っているからなのかもしれない。
出会った人は皆輝いていたから、そうも思いやりのないことはするべきでないと思ってしまえた。
「お兄ちゃんに認めて貰えなくっても、一方的に恋人だと思ってた時期もあるんですからね!」
「一方的な思い込みは恋人とは言わないんです。というか、お兄ちゃんって呼ばないでください」
「ちょっと、気難しいお父さんみたいなの止めてくださいよ」
可愛らしく言ってくれて、頬を膨らませてウィンクを決めてくれたが、ウィンクで閉じた方の眼からツーッと水が漏れ頬を伝った。
どんなに笑顔でも、どんなに声が明るくても、涙が零れてしまったようで、その様子はなぜだか感動を誘う様ですらあった。




