表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
兄妹だって、愛があるんだから大丈夫ですよね!  作者: ひなた
迷いだって、重要だから仕方ないですよね!
248/266

ⅡーⅤ

 提案かとも思ったのだけれど、唯織さんが俺にそんなことをしてくれる筈がなかった。

『本日、伺います』

 一方的にそう告げて、俺が何を言う前から彼女は電話を切ってしまった。

 伺いますと言われても、どうしたものか……。

 逃げたらまた電話を掛けられて、待ち伏せでもされそうなところだし、わざわざ来てしまうのに逃げたとなれば何を言われるか分かったものじゃない。

 適当な予定でも作って、断るとしようか。

 彼女の不穏な雰囲気からして、話題からして、恐ろしい計画に無理矢理参加させられるかもしれない。

「何? 熱烈なファン?」

 心配そうにしやがるだけに、邦朗の問いへの答えは困った。

「まあ、そうと言えばそうだし、そうじゃないと言えば真逆かな」

 どうせ相手は邦朗なのだから、全てを話してしまっても良いのではないかという気持ちも多少はあった。

 それくらい信頼している友達だってのもあるし、それくらい邦朗が馬鹿だってのもある。

「じゃあさ、園田冬樹の一番のファンはこの俺様だ、って伝えておいてくれよ。……いや、さすがに夏海ちゃんには勝てないか」

 なんだか邦朗が気持ちの悪いことを言い出したので、無視した。

 いや、こういうときは、シンプルに無視っていうのが一番だから。

「どうした? 相談ならお兄さんが乗るぞ」

「うるせ」

 鬱陶しいキャラを始める邦朗を軽く流したタイミングで、昼休みの終わりを告げるチャイムが鳴った。

「電話の相手は双葉唯織さん、ショコラティエの、あの双葉唯織さんだよ。心配してる暇があったら羨ましがってろ」

 吐き捨てるように言ってやってから、ドヤ顔で俺は邦朗の傍を離れた。

 自分の席に戻っただけだけれど、捨て台詞のようになって、単純な邦朗は本当に悔しがってくれるのだ。

 多分、俺に文句を言うようなことではなくて、今回はただ夏海のことが心配で話をしようと思っているだけのことなのだろう。声色はあまりに、それにしたってあまりに深刻そうだったけれど、唯織さんの夏海への想い方を思えば、そうなるものなのかもしれない。

 または、大袈裟な演技というのもありえるけれど。

 とにかく、脅されるようなことではないだろうから、そこは安心して大丈夫だろう。

 熱が入った唯織さんが何を言い出すかは警戒するべきだろうが、得に俺に危害を加えることを目的としている訳ではないのだから、それくらい。

 大丈夫だって思っているのに、午後の授業が全くもって入って来ない!

 唯織さん、気になり過ぎる……。

 俺もここまで気になることになるんだったら、いっそ今日来てくれるようで助かったかもしれない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ