ⅡーⅡ
「いやいや、何だったって、明らかに不自然なのはそっちじゃないか」
うざい口調は残したまま、さすがにそれは俺もその通りだと思うようなことを、邦朗でありながら言ってくる。
他の人なら確かにと思うだろうに、邦朗だとなんか腹立つのは人間性かな。
「あ、電話だ。ちょっと出て良いか?」
「駄目って言っても困るだろ」
「甘くて苦い恋のちょこれーと」が流れ出して、自分の着信音だと気付く。
困りもせず邦朗に駄目出しされたところで無視して電話に出るだろうけれど、会話中だったので一応確認をした。
誰からなのかを見て、一気に緊張してしまう。
唯織さん……。
『もしもし、久しぶりですね』
物凄く威圧感のある声で言われた。
「お久しぶりです」
緊張していることは、声からばっちり伝わってしまっただろう。
実際に会うとき、唯織さんは明るく愛らしく接しやすい雰囲気なのに、電話になるといつもこうして声色が恐ろしいものとなる。
俺以外に聞かれることがないから、だろうか。
それで心を開いてくれているのだと思えるほどはポジティブじゃなかった。
だって彼女はどう考えたって夏海が大好きで、それで俺を警戒しているのだから。
ぞっとする、恐ろしいものに違いないのだけれど、シスコンでも良いって今なら思えるから、もう逃げたくなかった。
声の震えは止まらないけど。
『学校の、お昼休みですよね。ですから今はなーちゃんと一緒ではありませんよね?』
二人が俺のいない現場で会ったときに、夏海が唯織さんに何かを言ったのだろうか。
それとも前の電話のときに、夏海が電話を代わるよう求めたからだろうか。
わざわざそんな確認をしてくる。
「普通に友達と一緒なだけです」
『ふん、でしょうね』
何を鼻で笑ったのか、唯織さん。
『シスコン、お仕事が順調なようですね。全てなーちゃんのおかげですのに、結構なことで!』
不機嫌なのか、俺のことが嫌いなだけなのか、敵意剥き出しだった。
今まで電話を掛けてきたとき、圧力的だったのは否定出来ないが、これほど直接的な思いをぶつけてきはしなかった。
強調してシスコンだなんだと言ってきたが、呼び名がシスコンだった訳ではない。
「どうしたんですか。そんなことを言いたいだけなら切りますけど」
勇気を振り絞ってそう言ってやった。
電話の向こうから唯織さんの笑い声が聞こえてきて、その魔王のような響きが世界を地獄へ導くかのような重さを持っていた。
演技のプロ、それも特に演技派と言われる彼女のことだ。
本当にこんな笑い方な筈はないのに、普段の彼女が違っていて、今の彼女が化けの皮の剥がれたそれこそ魔王なのだと信じてしまいそうだった。




