ⅡーⅠ
戸惑いの影響が早くも前面に出てしまっていたのだろうか。
学校で気が付かれるのはあまりに早かった。
「何か楽しいことでもあったのか? 顔がにやにやしている。まさか夏海ちゃんか、あの美少女と何かがあって、一つ屋根の下に暮らしているうちに間違いでも起こしてしまったか?」
興味津々といった様子で邦朗は本気そうに言ってくる。
まさか冗談に決まっているだろうけれど、それならもっと冗談らしい表情と言い方をしてくれたら良いものを。
え、冗談。冗談だよね?
いくら邦朗が阿保だからって、本気ではこんなことは言わないよな。
「妹のことじゃなくて、母さんのことなんだ」
変に変なことを言われでもしたら迷惑なので、こいつがそんな気遣いをしてくれるかどうかはともかく、普通だったらば避けたくなる案件であろう事実を正直に言った。
これで邦朗がだれに何を言おうと、昔は事実だったかもしれない事実が過去のものとなり、おかしなことを言っているおかしな人に落ち着くという訳だ。
最初から邦朗にはそれが相応しいだろう。
「へえ母親の。何度か夏海ちゃんのことは見たことがあったけど、そういえば父は見ても母は見たことがない。中々に珍しいパターンだよな。どういう人なんだ? もし一人で語るのがどうにも不平等と思えてならないとしたら、良かったらだけどこっちも母親について語ろうじゃないか」
「別にお前の母親に興味ないよ。前にちょろっと会った雰囲気からして美人なんだろうとは思うけれど、息子がこの仕上がりであることを考えると、悪いけれど少しばかり子育てに真面目さが足りなかったのかな」
「俺のことは良いけどママのことまで悪く言うなし!」
言い合いになってしまいそうだったので、邦朗の優しさに素直に甘えようとしたけれど、そうするほどに思考の時間が出てきてしまう。
まずこいつ、母親のことをママだなんて痛い呼び方をしていたのか?
「とにかく何もなかったとは言えないにしても、何かがあったんじゃないから、心配はしてくれなくて大丈夫だ。そのつもりはなかったんだけれど、にやにやしているとまで言われるとは、それじゃあ心配っていうのも違うのか。えっと、何お前、今日のは何だったんだ」
ツッコミどころはたくさんあったが、何よりママにはツッコミを入れたいと思ったのだけれど、一つ気にしたら他も全部が気になってしまいそうだったので止めた。
そうしたら俺自身も何を言っているんだか分からなくなってしまった。




