Ⅶ
やはり、仕事をする夏海の姿を見るのは、俺にとってかなり大きな影響を与えたのかもしれないな。
最近になって、前よりももっと、大変さが分かるようになったし。
それにどれだけ夏海が頑張っているかということも。
口にしてやったなら、本当に喜んでくれるんだろうな、夏海。
妹が喜んでくれるなら、それは嬉しいことだろうに、そうしようとしないのには俺の方に原因がある。
夏海が調子に乗るからって、勝手に夏海のせいにして、理由を付けようとしていたけれど、そうじゃない。本当はそうじゃない。
俺までが、夏海のことが好きになってしまったら困るからだ。
いや。そう言うと少し語弊があるかもしれない。
好きにということだったら、もうとっくになっている。ただ、隠していたそのことを、悟られてしまうのが怖いのだ。
このまま好きと伝えてしまったら、好きが知られてしまったら、もう兄妹ではなくなってしまう。それが、怖いのだ。
兄妹として生まれてしまったからには、最後まで兄妹であるべきだ。
どこまで仲が良かろうと、反対に仲が悪かろうと、兄妹は兄妹なのだ。
義理の兄妹。という形だったなら、もう少し変わったかもしれないのに。
「お兄ちゃん? 考え込んじゃって、どうしたんですか? もしや、夏海のことが好き過ぎて、思い悩んでいるんですか?」
服装が変わっていて、髪が微かに濡れている。
つまり夏海が入浴している間、俺はずっと、何もせずにボーっと考えていたということか。
何にも手が付かない状態って、こういうことを言うのかな。多分、違うよね。
「そうだね。どうして夏海と兄妹として生まれちゃったんだろうって、兄妹じゃなけりゃ、俺は夏海と……なーんてな。冗談に決まってるだろ、期待したのか?」
揶揄われて、揶揄い返して。そんなふりをしたけれど、紛れもなく俺の本心であった。
「うー、お兄ちゃんの意地悪! そりゃ、期待するに決まってます。だってあのお兄ちゃんが、やっと素直になってくれたと、そう思ったんですから。でも夏海、お兄ちゃんのこと大好きですから、ずっと待っていますよ」
大好きだからずっと待っている、さらっと夏海は言ったけれど、それは可能なことだろうか?
待っていると言ってくれるのは嬉しいが、それを受け入れることが許されるのだろうか?
自分の中で少しずつ、認めてしまっている夏海への恋心。
膨らんできて、俺のことを乗っ取ってしまいそうで、そうしたら夏海に何をするか分からなくて。
素直で明るい夏海のことを羨んでしまうのであった。




