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兄妹だって、愛があるんだから大丈夫ですよね!  作者: ひなた
家族だって、離れていたんだから仕方ないですよね!
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 言葉を真実と信じ、疑わない夏海に、疑いを持たせることは良いことだろうか。

 彼女がなぜ夏海を騙していたのかを考えていると、ふと、俺はそう思った。

 唯織さんだって、夏海と遊んでいるときほど、普段は明るく元気なタイプではないだろう。あの顔で、さらっと嘘だって吐いていた。

 それは確かに夏海を騙すことではあるけれど、悪いこととも言い切れない。

 つまりは唯織さんのそれと、同じことなのではないだろうか。

 折角、夏海の為を想ってしてくれたことを、俺が勝手に嘘を暴いて、裏切りを夏海に告げるのが良いことか。悪戯に夏海を傷付けているだけではないか。

 とはいえ、いつまでも夏海だってそのままでいる訳でもないし。

 そう考えると、嘘を吐いていたというよりも、夏海が嘘を吐かせていたと考える方が正しいのだろうか。

 ここまで素直で無邪気な夏海の隣では、誰もがそうあらなくてはならないように思えてしまうから。

 分からない。どういうことなのだろう。

 そういえば、お母さんの友達なのだと言っていたけれど、それはどうなのだろう。

 そんな嘘を吐く意味は、年齢詐称よりもきっとないから、間違えなく本当のことだと思って大丈夫だろう。

 だけど、それを最後に伝えてくれたのはなぜ。

 分からないことが多過ぎて、俺もへなへなと夏海の傍に倒れ込んでしまった。

「次に会ったら、どういうことなのか、アリスちゃんに聞いてみます。本人不在で推測するよりも、それが一番でしょう?」

 微笑んで夏海はそう言ってくれたけれど、それを彼女が求めているかどうか。

 だって夏海に知られたくなかったから、隠していたんじゃないだろうか。

 もう俺は話してしまったのだし、今更かもしれないけれど、夏海からは言わせない方が良いかもしれない。

 でもだからって、知らないふりをさせるということで、夏海に嘘を吐かせたくはない。

 演者なのだから、上手く誤魔化すことは出来るのかもしれない。こう見えても、夏海は天才子役から演技力でやってきた、演技派天才声優だ。役者だ。

 ゲームやらアニメやらで、その実力は十分に知っている。

 けれどそれと嘘とでは話は別だ。

「うん、そうだね。今度、アリスさんに会ったら、二人で質問してみようか」

 どうしてもアリスさんという言い方には、違和感を覚えてしまってならない。

 彼女だって怒りはしないだろうし、今までと同じように、やはりアリスちゃんと呼び続けようか。

 分からないことばかりで、本人に聞いてみるのが一番だということで。

 夏海の言葉はその通りだと思う。

 だから俺は、心身ともに疲れていたのもあって、考えるのを止めていた。そしてそのまま、ソファーで眠ってしまっていた――。

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