ⅢーⅩ
絶対に疲れがなくなる。
それほどまでに可愛いドラマCDとは、何を買ったのだろうか。
「今日、家に遊びに来いよ。キャストはそのときまでのお楽しみってことで、ヒントは、冬樹もよく知っているあの人、ってところかな」
詳しく聞こうとすれば、お楽しみなどと言われてしまう。
よく知っているというのは、きっと知り合いという意味で、よく知っている人と言うことなんだよね。
別に何か予定がある訳でもないし、その日は邦朗の家へと遊びに行った。
ハードルを上げたんだから、そんじょそこらの可愛さじゃ、邦朗のことを解放するつもりはない。
本当に満足することが出来る、可愛いものを紹介して貰う。
「キャストを聞かない段階で、素直な気持ちでまずは聞いてみようか」
この仕事に触れるまでは、アニメは見たけれども特別好きと言うほどでもないし、声優のことなんて一つも知らなかった。
しかし最近は、ゲームやドラマCDにより、声優と言うのがいかに素晴らしい仕事なのか、気が付きつつあるのだ。
というか、今になって声優ファンになっているとでも言うのだろうか。
何にしても、もう何人かは、声を聞いただけで誰だか分かるような状態な訳である。
「おうよ。受けて立とうじゃないか」
俺との交流があることを、邦朗が知っている人。
共演経験があるとかならば、会ったことがあるだろうと推測出来ようが、こいつはよく知っているとまで言った。
そうしたら、唯織さんとかになるのだろうか?
あの人の演技は尊敬するものだし、ときめくほどに可愛らしいことも多いが、あまり聞きたくはないかな……。
嫌いな訳じゃないけれど、なんというか、ね。
「それじゃあ行くよ。再生っ!」
パソコンにCDを入れて、大声で再生と叫びながら、クリックをしてくれる。
そこで流れ出したのは、確かによく知る人の声であった。
「ちょっと待って。おい邦朗、待て、一旦止めようか」
恥ずかしさに、慌てて止めさせようとするけれど、邦朗には従うつもりなど全くないらしい。
妨害しようとしている俺のことを、全力で妨害してくる。
これほどまでに俺が恥じらう時点で、誰のものなのか分かるだろうが、邦朗が流し出したそのCDは俺のものである。
初挑戦した、一人でのドラマCDの収録。
やる前は勿論、恥ずかしさに襲われたけれど、収録中はそう言ったこともなく、楽しくやり遂げることが出来た。本当になり切れて、あっという間に終わってしまったことを覚えている。
しかしそれを改めて聞くなど、それほどまでに恥ずかしいことはない。
自分が囁く愛の言葉を、誰が自分で聞きたいなどと思うものか。
これは完全に、邦朗に騙されたということだろう。
気になる情報を聞き出そうとしていたのに、こんな単純な罠だったとはな。




