ⅢーⅧ
今のままの俺だから、夏海も俺に構ってしまうのかもしれない。
俺がもっと兄らしくなって、頼れる存在になれたなら、夏海も俺から離れられるのかもしれない。
そうしたら、立派な兄として、いつか夏海が彼氏を連れてくるのを待つんだ。
父さんはきっと悲しむだろうけれど、俺は喜んでやるんだ。
いつまでも子どもの頃の約束に縛られていないで、俺も夏海も前へ進めることを、喜んでみせるんだ。
夏海がブラコンであるのは、俺のせいだと唯織さんは言った。
しかし俺は、俺のせいで夏海がブラコンなのだとしても、それは俺に非があるせいだとは思わなかった。自分がシスコンだとも頑なに認めなかった。
今でも、自分のことをシスコンだと公言するつもりはない。
それでも気付いている。
夏海が俺に言うように、兄妹にあるまじき感情を抱いている、そういったことは断じてない。
そうではなくて、当たり前にあり過ぎる夏海という存在に、甘えてしまっているのだ。
役に立ちたいのだと、頼って欲しいのだと、夏海は俺にそう要求する。
それは俺が一人じゃ何も出来ないからなんだ。
しっかりしよう。人のせいにするのをやめよう。
困った発言の多い夏海だから、傍で俺が見張らなくてはいけない? そうじゃないだろう。
一人じゃ何もできない俺だから、傍に夏海が付いていなくてはいけないんだ。
一緒にいることを、夏海の希望だからと、自分ばかりが逃げて楽をしてきた。
仕事という形で、俺に外の世界を見せてくれたのは、そうしたことに気が付かせる意味もあったのかもしれないな。
今年の初めの自分に思う。
勿論、何も考えておらず、軽い気持ちで始めただけ。やってみないかと言われたから、やってみただけ。
それだけのことなのだけれど、今になってみると、自分の行動にすら意味を付けてしまうのであった。
本当にいろいろなことがあったから、そうしないと整理出来ないのかもしれない。
「夏海。ごめんね、夏海。ありがとう、夏海。……大好きだよ、夏海」
静かな部屋の中で俺は一人、溢れてくる想いを、止めることが出来なかった。
父さんが帰ってこないことを、夏海が戻ってこないことを、願うことくらいしか出来なくて、情けなかった。
この情けない俺が、妹を守れる、強い俺に変わるんだ。
強くなろうと思ったら、心の底から弱い俺が溢れてくる。
それで全て吐き出してしまったなら、強い俺になれるんじゃないかと思い、俺はそうなるままになってみる。
嘘じゃなくて、大丈夫と言えるくらい。
心配されることもなく、大丈夫かと問い掛けることが出来るくらい。
しっかりした妹が、頼り甘えてくれるくらい、強くなるんだ。もう逃げないよ。




