Ⅱ
「えっと、よく分からないんだけど……。とりあえず、夏海を呼んで来てもいいかな?」
まずはあいつにしっかり説明して貰わないとな。
用があるのは俺なのだとしても、この状態で彼女と話をしていても、全く理解が出来そうにない。
「ええ、まあ……いい、わよ」
少女の許可を貰い、俺は二階の自室いるであろう夏海を呼びに行った。
「おい、夏海! 出ておいで」
俺はそう言って、夏海の部屋のドアを軽くノックした。
するとドタバタと派手な音がして、部屋の中から夏海が飛び出てくる。
「どうしたんですか? お兄ちゃん、遂に夏海と……っ」
夏海は年齢以上に大人っぽいし、喋らなければお淑やかな雰囲気だ。髪は腰ほどまでの綺麗な黒髪、今は二つに縛っている。
喋らなければ! 普通に可愛いと思う。
本当に、喋りさえしなければ、可愛いんだけどなぁ。
「客だ、いいから早く来い」
何かおかしなことを言い出す前に、俺は階段を下り出した。
それなりの距離を取ってしまえば、慌てて着いて来るばかりで、夏海は何も言いやしないからね。
「ちょっとお兄ちゃん、待って下さいよ。どうして、どうして可愛い妹である夏海を無視するんです? ちょっとぉ」
夏海は後ろで呪文を唱えながらも、俺の後を着いて来てくれる。
素直なところは夏海の良いところだ。
「夏海さん、こんにちは。どうして私がいるかは分かるわよね」
何か怖いオーラを放ちながらニコニコとしている少女を見た途端、夏海の顔色がスーッと青ざめていった。
そして逃げようとしたので、俺が逃げないように捕まえた。
事情は全く呑み込めないが、ここで夏海を逃がしたら、もっと進まないような気がしたから。
「お兄ちゃん、何でいきなり。いきなり優しくするのは反則です、そんなことされたら夏海は……」
逃げようとして、俺が掴んでいる腕を振り回そうとするけれど、さすがに男子高校生と女子中学生である。
暫くすると諦めたようで、そのようなことを言い出す。
「いいから、早く説明しなさい」
「夏海さん、私のことも考えて頂戴ね」
俺と少女が言うと、夏海はその場に正座した。
何をしても逃げられはしないのだと、完全に抵抗を諦めたのだろう。
にしても、どうしたのだろうか。笑顔で圧力を掛けながら、夏海に説明を求めることにする。
「夏海、この少女は誰? そこから説明してくれるかな」