ⅡーⅨ
「えっと、直樹が弁当っぽい顔してるからですかね」
また名前変わった。てか唯織さん、弁当っぽい顔って? それって、どうゆう……。
「山田の見た目的に、豚肉弁当じゃないですか?」
夏海ー! お兄ちゃんは夏海を、そんな失礼な子に育てた覚えはないよ!
「山田って誰! あっお兄さん、いつものことなんで。別に大丈夫だよ、そういつもの流れね」
おっさんが山田に全力ツッコミをしてから、俺のところに来た。いやでも、いつもの流れって……。
「そうですよお兄ちゃん、太郎はこれでも喜んでいるんですから」
「そっか、そうだったんだ。でも夏海、他の人にそう言うこと言ってない?」
「はい、三郎にしか言ってませんよ」
喜んでいるなら、別にいいや。よく知らない俺が止めたりしたら悪いもんな。夏海だって、おっさん以外に対してはちゃんとしてるって言ってるし。
「冬樹くーん! 何納得してんの? 喜んではないから、喜んでるわけじゃないから」
このおっさん、確かに面白いな……。でも俺は違う、失礼なことは言わないよ。まあそれで喜ぶんだったら、でも俺は言わないよ。
「マイケルったら照れちゃって、本当は嬉しいんでしょう?」
「唯織さん、せめて日本人にして貰えるかな?」
そこなんだ……、つっこむとこそこなんだ…。
「弁当食べに行かないの? てか私、先に行っててもいいかしら」
ああアリスちゃん、完全に存在を忘れていた。弁当の存在も忘れていた。
「アリスちゃん、ワタシも行きます」
唯織さんが立ち上がり、皆次々にスタジオの外へと向かう。しかし夏海だけは、いつまでもその場に突っ立っていた。
「夏海、どうかしたのか?」
心配なので、俺は夏海に話し掛けえる。どこか痛いのだろうか。
「いえ、何でもありません。何でもないと、思います。ほらお兄ちゃん、夏海は大丈夫だから早く行きましょう」
何でもないか、それならいいんだけど……。どこか様子が、変なんだよな。
「ほらお兄ちゃん、早く来て下さいよ」
「あ、おう」
俺達もスタジオを出て、おっさんたちの後を追う。
「飲み物は何にするの?」
夏海まで椅子に座ると、アリスちゃんが訊いてくる。飲み物なんて、何でもいいしな……。
「夏海、ミルクティでお願いします」
「ワタシはアリスティで、お願いします」
夏海と唯織さんが注文する。……アリスティ?
「ええ、了解よ。貴方は?」
俺に訊いてるのか? 他の人達、でもアリスちゃん完全に俺見てるもんな。
「水で大丈夫だよ」
何かよく分からないし。水なら確実でしょ?
「そう、分かったわ。他はいつものでいいわよね」
成程、いつもの……だと? 他のおっさんやお姉さんたちは頷く。




