Ⅳ
だけどここで口に出して謝ってしまっては、設定が崩れてしまう気がした。それに、事情があるだなんて、察しが付くようなこと言えないし。
邦朗のことを疑ったりはしていない。そんなことをするつもりはない。
だけど、発表前に情報が漏れてしまったとき、邦朗を疑うのは絶対に嫌だから。
……だから、仕方がないよね?
発言に問題はあったけれど、邦朗からしてみればいつも通りだったんだもんね。ごめん。
「まあ夏海にお願いしたいことは一つなの。家の中でも十分問題だが、そこは百歩譲る。家の外で、相手がたとえ邦朗だとしても、そういうことは言わないようにしてね? 女の子なんだから」
「お兄ちゃん、夏海のことを思ってそこまで言ってくれるなんて、ありがとうございます」
折角邦朗にも来て貰っているし、時間があったら少し話していくか、遊んでいくかしようかな。
どうせ遠回しに何かを告げようとしても、それは夏海に伝わらないのだろう。解釈はどこかずれているし、まさか俺から注意を受けるなんてことを、考えていなかったらしい。
だったらもう、と。俺は夏海に要点だけを伝えてあげた。
間違った受け取り方をして、更に悪化されでもしたら困る。
ただ、優しく言ってあげたとはいえ、お礼なんて言われると伝わっているのか不安になる。
「邦朗も、夏海が今度そんなことを言っていたら、ちゃんと叱って止めてくれよ? 次に怪しい発言があったら、裁判をするだけではなく、罰を科すからね。邦朗も共犯ということにするから」
邦朗が少し騒がしいけれど、夏海を止められなかったのなら共犯に決まっている。
なんで? も何もないし、そんな質問をする意味が分からないね。
「因みになんだけどさ、冬樹がいる前でなら、俺と夏海ちゃんとでどんな会話をしても良いんだよね? そういう契約で良いんだよね?」
夏海だけではなかったらしい。意味が伝わっていなかったのは、邦朗だって同じだったようだ。
そういうことじゃないんだよな。そういうことじゃ、ないんだよなぁ。どうしたら分かってくれるんだろうな。
これはやっぱり、どちらにも問題があるんじゃ俺が見張っておいた方が良いのかな。
「はぁ、何を言っているの? それは別に構いやしないけど、容赦なく怒るからね? 見逃しゃしないからね?」
溜め息混じりに、俺は適当に邦朗のことを制しておく。
夏海のことも軽く睨んでから、「それじゃあ、一緒に遊ぼう!」と言って立ち上がった。
二人とも俺の態度に着いていけていない様子だったが、持ち前の元気さを取り戻し二人とも笑顔で立ち上がる。
「はいっ! 遊びましょう」
「冬樹から誘ってくれるなんて、珍しいな」




