Ⅲ
好みのパンツがどんなものかって、どんな質問だよ。
そして妹が俺の友達にそんな質問をしたというのに、相変わらずと呆れるくらいで終わってしまうのだから、俺にもどうかと思うよね。
「彼の言葉に誤りはありません。一言一句、正確に夏海の質問を再現しています。しかしお兄ちゃん、そこで気になるところがありませんでしたか?」
まだ俺は何も言っていないのだが、夏海は邦朗の言葉が真実だと認めた。
はて、気になるところとはどれのことを言っているのだろうか。
気になることだらけだったので、彼女がどれを気になっているのか分からなかった。
首を傾げていると、夏海は仕方がないというように説明を始める。
「参考までに、夏海はそう言ったのです。そう! 夏海はただ、作詞をする参考にしようと思って、お兄ちゃんと親しい彼に問い掛けたのです。お兄ちゃんの好みに合った歌詞を作らなければいけない、そう思っただけなのです。そんな夏海のインタビュー、どこがいけないと言うんですか!」
熱弁されても困る。それに、そう言われてしまうと、……。
いやいや、いけないから。危うく騙されるところだったけれど、明らかにおかしいから。
「へえ、俺の好みに合った歌詞を作ろうと思って。その為に必要なインタビューなんだったら、直接俺に聞けば良いんじゃないの? 邦朗に聞く必要はないだろ」
反論は予想していなかったようで、夏海は衝撃を受けたという表情をした。
しかし表情だけで、衝撃を表してしまうんだから器用なものだよな。妹に変顔とかはして欲しくないが、顔芸なんかやってみたら得意なんだろうな。
関係ないことを考えてしまうが、自分の中でしっかりと議題へと戻す。
「いや、でも、ほら、ね? あれじゃないですか」
完全にさっきの言葉で俺を納得させられると思っていたようで、急にしどろもどろになった。
自信ありげな笑顔だったから警戒したんだけど、どうやら夏海の悪巧みはこの程度だったらしい。
「その前に質問しても」
「良い訳ないだろ! 堀田くんは反省の意を込めて、静かに正座していること」
邦朗が気になったのは、歌詞についてのことだろう。そもそも邦朗は、なぜ夏海がそんな質問をしたのか全く分からない筈だから、相当不思議に思っているんじゃないだろうか。
友達の妹に会ったら、いきなり兄の好みのパンツを教えてくれ、だからね。
一番戸惑ったのは俺よりも邦朗なんじゃないかと思う。
だから今も着いて行けなくて、質問しようと思ったんだろう。
その許可は、都合上降ろす訳にいかないんだけどね。ごめん、正式に発表されたときに話すよ。




