ⅣーⅩ
夏海はこう言うけれど、俺は立派な男子高校生である。
そういったことに、全くの興味がないという訳ではない。
まあ、どこぞの邦朗を考えたら、興味がないとも言える程度かもしれないが。
「なるほどね。少し練習してみるから、歌詞だけでも借りて良い?」
「はい、勿論ですっ!」
替え歌ということは、音楽はそのままで良いのだろう。
実際に収録しに行くまでに、練習はしっかりしないとだよね。
ただ残念なのは、堂々と学校に持って行って、歌詞を頭に叩き込むことが出来ないということ。
勿論、わざわざ覚えて収録する必要はないんだよ?
でも歌詞を見ながらの歌じゃ、そこまで感情を込められないと思うんだよね。
こうして見ると、俺も慣れてきたものだ。
プロ意識と言うには少し足りないものだろうが、頑張らないとって思うから。
「冬樹、最近どうしたんだ? なんか常に上の空って感じだぞ」
授業中はさすがに授業に集中していたけれど、それ以外の時間は、発売が迫るCDのことを考えていた。
発売予定日は、十二月の二十八日。俺の誕生日である。発売記念イベントは、誕生日イベントと兼ねて行われる予定らしいが、それについてはまだ発表されていない。
まだ時間はあるし、遠いといえば遠いのかもしれない。
しかし不安が訪れるのは、時期が決まったそのときからなんだよ。
これから近付いてくるに連れて、もっとプレッシャーはきつくなるんだろうな。
夏海に恥を掻かせちゃったらどうしよう……。
「大丈夫か、冬樹? 魂どこかへ行っちゃってるんじゃないのか?」
昼食を口に運びながらも不安に押し潰されていたところ、箸を持つ右手を抑えて食事の妨害をする、迷惑な存在に気が付いた。
なんだ、邦朗か。
どうやら、ずっと話し掛けてきていたらしい。
「え、何? ごめん、全然聞いていなかった」
「うん、そう思った。少しも聞いていないだろうな、と思っていたから、全く問題ない」
少しも聞いていないのを分かった上で、話し掛けてきたということなのかな。
励ましてくれようとしているのだろうか。優しいところもあるんだよね、友達としては良い奴だ。
「ところで冬樹、パンツってどう思う?」
前言撤回。ほんの少しでも良い奴と思ってしまったことが恥ずかしいくらい、理解の出来ない質問を投げ掛けてきた。
全然、少しも、全くもって、励ましの言葉ではない。
どういう質問なんだよ、それ。
「冬樹みたいな奴でも、パンツが好きなの? パンツを被りたいとか思うの?」
教室で何を聞いてきているんだか。
しかし普段だってこんな馬鹿げた質問をしてこないのに、どうかしたのだろうか。
夏海といい邦朗といい、俺にパンツと言わせることが流行っているのか。なんとも迷惑な。




