ⅡーⅦ
「ああ! いおまでお兄ちゃんを狙って! お兄ちゃんはもう心も体も夏海のものになってしまっているので、今更いおや佐藤が何しようと無駄です」
俺達が話しているところに、夏海が乱入してくる。それで、誰が心も体も夏海のものなんだろうねぇ。
「夏海は、いつもこんな調子なのか?」
だとしたら、教育が必要になるが……。
「ここまでのことは言いませんが、冬樹さんの話は沢山されてますよ。だから大好きなんだな、っとは思ってましたが……」
唯織さんとアリスちゃんが顔を見合わせて、困ったように微笑む。まあ夏海はちょっと、異常だからな。
でもまあいつもはここまでじゃないんなら、少しは考えてるんだな。少しは! ほんの、少しくらいは!
「次は唯織さんだよ、準備しといてね」
夏海がメインヒロインなので、通常ルートの撮影を今までしていたらしい。そして次は、特殊ルートの撮影をするらしい。
「え? は~い」
唯織さん手を挙げて笑顔で、おっさんに返事した。
「お兄ちゃ~ん、夏海の惚れ直してくれたでしょう? さっきの夏海の役、見ていてくれたんですもんね!」
そうだね、凄いとは思うよ。惚れるかどうかをともかくさ。
「夏海、お前は本当に凄いよな。自慢の妹だよ。そう言う事を言いさえしなければ、もっといいんだけどなあ」
俺が言うと夏海は、心外そうな顔で立ち上がった。
「お兄ちゃん、酷いですよ。そこが夏海の萌え要素です、それがなくっちゃ夏海は夏海じゃありません」
いやいや、それは自分で言うことじゃないでしょ……。
「大体お兄ちゃんだって、夏海みたいな性格の妹の方がいいに決まってます。それとも何ですか? 無視され続けて、キモいとか言われてた方がいいんですか?」
そう言う訳じゃ、ないけど……。って危ない危ない、夏海に説得されてしまうところだった。
「普通にもうちょっと、俺達は実の兄妹ということを考えていてくれればいいよ」
そう。アニメや漫画によくある義理の妹なんかじゃなくて、夏海は俺の実の妹なんだからさ。
「えー、お兄ちゃんはまだまだですよ。実の妹だからこそ、これくらいで我慢してるんじゃないですか。だってお父さんに、迷惑掛けさせないようにね……」
「でもーっ」
「それに夏海はもう中学生なのに、襲ったりもしてないじゃないですか」
襲われた経験は、確かにないけど……。ってやっぱ可笑しい! 年齢関係なく、妹に襲われるって普通ないから。
て言うか、俺の発言権はないんですか!?




