ⅢーⅤ
「単純と思われたくはないけれど、やっぱり俺も単純なものだね。褒められて、つい嬉しくなっちゃってね」
夏海に言われて正気を取り戻すと、苦笑い気味に俺は返す。
その表情が余程面白かったのか、何がツボに入ったのかはわからないけれど、夏海は爆笑をしてきやがった。
ただそんなところも可愛いと思ってしまうんだから、俺はシスコンなのかもしれないな。
とはいえ、妹に対して恋愛感情を抱いたりはしないから、そこは勘違いしないでおいて欲しい。
「でもお兄ちゃん、気を付けて下さい。褒めることによりお兄ちゃんの平常心を失わせます。そうして、お兄ちゃんが油断した隙に、夏海を愛するお兄ちゃんの心の隙間に入っていくのではないでしょうか。その様な汚い手段を使うなんて、許せません」
爆笑をやめると夏海はまたそんなことを言っているので、俺もやっと普段のペースを取り戻してきた。
「平常心を失うほどは喜んでいたつもりないよ。確かに、冷静とは程遠かったのかもしれないけどさ。それと、夏海を愛するってところも違うよね。お世話になった人なんだから、許せないとか言っちゃ駄目でしょ」
爆笑。そして謎の激怒。
心配になるくらい感情の起伏が激しかった夏海をなんとか宥めると、俺は微笑み掛けた。
褒めてくれたから好き、とかそういう訳じゃない。そういう職業だと言うだけだが、お世話になった人なんだ。
そんな人たちに対して、許せません、は失礼だからね。
お兄ちゃんとして、そういうところはちゃんと注意しないといけないからさ。
「はい。ごめんなさい。今度から気を付けます」
でもすぐそうして素直に謝るところは良い子だと思う。
「ほら、夏海が出ているから絶対にチェックしましょう、って言っていたでしょ? 一緒に見に行こうか」
「はいっ!」
俺の言葉に夏海は嬉しそうに、元気いっぱいに返事をした。
「ねえねえお兄ちゃん、カップリング曲はどうなるんですか? 夏海は頼まれていませんので、やはりそちらはプロの方がお作り下さるのでしょうか。特典とかは何を付けるのですか? 発売が楽しみです」
そのアニメを見終わると、夏海が物凄い勢いで質問を重ねてきた。
彼女曰く、アニメ放送中に疑問が溢れてしまったけれど、放送中に我慢していた結果終わった瞬間にそうなってしまったんだそうだ。
ジャンルとしては戦争もの。だけど鉄砲だの戦車だのの説明が多いので、中学生の女の子としては楽しめなかったのだろう。
実を言うと、俺もあまり好き好んで見るアニメのタイプではない。
その上夏海の出番が少ないから、増々彼女は暇になってしまっていたんだと思う。




