ⅡーⅣ
「ゆっきー最高でしたっ!! 歌詞も夏海様らしくて素敵でしたっ!!」
新学期が始まり登校すると、教室の前で待ち構えていたらしく、横島さんが突然のハイテンションで叫び出す。
どこかで来るだろうと予想はしていたけれど、かなりの大声だったので驚いてしまう。
クラスメートたちも驚愕の表情でこちらを見ている。いつも静かな横島さんだからこそだろう。
「あ、ありがとう。妖精の森に来てくれたんだね」
これで違うと言われたらウケるわな。
そんなことを思っていたのだが、やはりそうだったらしく横島さんは大きく頷いた。
「俺も参加したぜ」
戸惑うくらい輝かしい笑顔を浮かべている横島さんに俺が押されていると、後ろからそんな声が聞こえて来た。
このウザさ、邦朗だ。
「あれ? お前、パスポート買えなかったって言ってたじゃないか」
父さんに連れられて買いに行ったときに、邦朗に出くわして、確か買えなかったと嘆いていたと思う。
分かんない。嘆いてはいなかったかもしれない。
どちらにしても、もう売り切れとなっていた筈だ。
「金を払えば手に入るものだぜ? へっへっへ」
俺の疑問に、邦朗はゲスい笑顔で返してくれた。
以前にも言ったが、何気に邦朗の家は金持ちなのである。
しかし金に物を言わせてパスポートを入手するとは、なんとも卑劣な。許せないな。
「冬樹さんへの愛をお金で買うなんて、そんなのファン失格です。同じファンとして恥ずかしい限りです」
ほら、許さなかっただろ?
怒りに拳を振るわせて、横島さんは邦朗のことを睨み付けている。
「ごめんごめん。今のは冗談だから、か……横島さん、落ち着きましょうか」
一瞬名前で呼ぼうとしたようだが、横島さんの怒りを感じて呼び方を名字に直した邦朗。女好きの変態で、女子に嫌われることを趣味としているのではないかとも言われる邦朗にそこまでさせるとは、さすがは横島さん。
落ち着きましょうか。なんて、敬語を使っちゃっている。
見ている側としては面白かった。助けを求めるような目をしているけれど、自業自得なので助けるつもりもない。
「そんな呼び方しないで下さいっ! 冬樹様が横島さんとお呼び下さるのです。同じ呼び方だなんて、汚らわしい! 汚らわしいです」
清純そうな色白美人な横島さんだから、汚らわしいと言う言葉には少し驚いた。
ハイテンションな姿を見る度にイメージが悪化していくのは確かなのだけれど、本人はそれにも気付いていない様子。
俺のファンには違いないのだから、いつまでも大切にしたいとは思うけどさ。




