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「別に、お前が来なくても大丈夫だ。私は兄なのだぞ」
ここでまた台詞を入れ、夏海も含めてフリートークだ。
質問を受けたりして、それに答えたりする。こちらから質問をすることもあった。
今回はとりあえず妖精と言うのをモチーフにやらせて貰った。俺の設定としては、妖精の王子と言ういかにもきらきらしたもの。
妖精と言う意見や王子と言う意見があったので、両方取り入れたのだ。
正直恥ずかしい。
実際にファンの人は俺のことをどう見るか。イメージのようなものを問い掛けてみた。
傍で見ている人では無く、ファンだからこそ言えるものと言うことがある。そして、意外な答えが返ってくる。
イベント参加人数はそこまで多くない。そこまで大きなイベントをやれるほど俺は凄くないからだ。
広い場所も使っていないので、意見は叫んで貰うと言うやり方になった。マイクを持っていくのが面倒臭い、その雑っぷりだ。
「イカ!」
勿論、王子様だとか言ってくれた人もいた。
その中でのその言葉は、俺にかなりの衝撃を与えた。
「イカ? えっと、どう言うことでしょう」
それにはつい聞き返してしまった。
確かにイカは好きである。食べるのも好きだし、見るのも好きである。
だけどそれをどこかで言った覚えはない。
その人曰く、俺の見た目がイカっぽいらしい。
俺的にはイカって凄い可愛い奴。けれど、そう言われて嬉しいかと言われれば別だ。
本当に褒めているのかって話だ。
どうやら白くて細くて滑らかだから、イカっぽいと。俺のどこが滑らかかは分からないけれど。
「どちらかと言うと、クラゲの方が好きかな」
さりげなくクラゲ好き発言をして、その質問を終える。
「じゃあ、お兄ちゃんはイカ王子でいいですか? ファンの方の意見をまとめた結果です」
夏海はお姫様の口調を捨て、普通にそう言って来た。いや、俺だって普通に喋ってるけどさ。
しかし、イカ王子と言うのは嬉しくない。それだったら、恥ずかしいけれど妖精の王子の方がまだましだと思う。
「なんか、貴重な意見を聞けた気がするよ」
その他にも、自分じゃ気付かないところは沢山指摘してくれる。
やはりこれは俺にとって大切なイベントだな。
「俺はクラゲが大好きなんだー!!」
そして最終的には、こうなってしまった。なぜなのか、俺にも良く分からない。
ただ、愛を叫べと言うから。
どうやら、姫様への愛を叫べばよかったらしい。しかし俺はクラゲが大好きで、その心に嘘は吐けないのだから仕方がない。
本当に楽しいイベントだった。
思ったよりもガチガチにならずに、普通に話せていたと思う。
そして遂に、イベントは終わりのときを迎える。最後は曲の発表だ。




