Ⅷ
『ここは可愛い妖精の暮らす、妖精の森。今日は王子様のティーパーティー。皆も――』
イベント開始直前。
緊張して、ナレーションは殆んど聞こえてこなかった。因みにこれは、ショコラティエの園田夏海に撮って貰っている。
確か、なぜだか夏海に俺の真似をして読ませたのである。
「ようこそ、可愛い子猫ちゃんたち。一緒にティーパーティを楽しもう」
精一杯カッコ付けて、俺はそう言う。滅茶苦茶恥ずかしいけれど、一言目はこれなのだから仕方がない。
勘違いしないで欲しい。俺は言いたくて言っている訳ではない。
それと、最初の一言目だけなのである。他はここまで恥ずかしい台詞は入っていない。
「王子、ここにお座り下さい。今日は彼ら、彼女たちを楽しませる為のパーティにございます。王子が皆様を楽しませる為、トークの種は持って来ております」
司会者の方は執事と言う設定である。
高級そうにコーティングされた、黒でカッコいい服装。白い手袋もして、執事のイメージ通りと言った感じである。
白石大勇さん。声優もやっているし、こういうイベントの司会者もよくやる人らしい。
ふわふわと少し跳ねているような黒髪。優しそうな目は少し垂れ下がり、丸い鼻もとても優しそう。口はいつでも優しそうな微笑みを示していて、全体的に優しさで出来たような人。背は俺より少し高いほどで、ふっくらとしている。優しさで出来たような人だと思う。
保護者のような雰囲気なので、少し上に見えてしまうが三十二歳だと言っていた。
「私が子猫ちゃんたちを楽しませるのか? わかった」
地声で適当に言うだけでいいと言うので、別に恥ずかしくはない。台詞自体は構わないのだが、子猫ちゃんと言う二人称は止めて欲しいと思う。
それで喜んでくれるんだったら、別にいいんだけどさ。
「皆様から疑問が届いておりますので、まず王子にはそれをお答え願いたいのです。この様な場でもなければ、王子自ら民の声を聞くことは出来ますまい」
事前に、俺に対する質問をネットのメールだかで集めておいたらしい。そしてそれを紙に書き、折り畳むと箱に入れた。
その中に手を突っ込み、好きな紙を引く。
俺はそこに書いてあった質問に答える。とかそんな感じだと思う。
「王子は姫についてどうお思いなのですか? 結婚についての真相は」
とりあえず俺は一枚引き、そこに書いてあった内容を声に出して読む。
読んだだけで笑いが起こったのは、内容が可笑しいのだと思う。別に俺が悪い訳じゃないよね。




