Ⅶ
信じよう。なぜだか分からないけれど、俺のファンがいるんだよ。
イベントなんてやるんだぜ? そんなの、多分人気があるからだもん。夏海の兄と言う理由で、そこまでする筈がない。
俺がなぜか人気になった。そう、俺は人気者なんだ。俺は人気者だから出演している、俺は皆に愛されている、皆が俺を求めている。
洗脳するかのように、そう何度も頭の中で繰り返した。
それは傍から見ればかなり痛々しいこと。今誰かが俺の頭の中を見れば、大丈夫かコイツと病院に連れて行かれても可笑しくないだろう。
「お兄ちゃん、落ち着いてくれましたか? 自信を持って、ステージに立つのですから。皆はお兄ちゃんを見たくてお金まで払っているのです。完璧な姿を見せないと失礼に当たるでしょう」
俺を見たくてお金を? そうだよ。俺の為に、買いに来てくれたんだ。
売り切れていた。つまり、席が埋まると考えていいのだろう。確かに大物アーティストのライブに比べたら、大したことないのかもしれない。
それでも、俺にとっては大切なイベントなのだから。
「そうだな。夏海、ありがとう」
俺の為に頑張ってくれる、素晴らしい妹。これだけで俺は恵まれている。それなのに、頑張らないなんて……な。
それに夏海と同じ血を持っているのだから、人気も出て当然。
「では、厳しく行きますよ。今のお兄ちゃんなら、きっとイベントも大成功です」
厳しくと言う割に、褒め言葉から始まるところが夏海らしい。
それでも夏海は、やるときにはやれる子である。彼女がいろいろ指摘してくれるおかげで、俺はかなり進化出来たような気がした。
結構、自信も付いたし。
これならば、何百人もの人を前にしても俺は自然にいられると思う。緊張をしないとは言わないけどさ。
今の俺なら、イベントも大成功。
夏海がくれたその言葉を、俺は自分に言い聞かせた。
本番前日、緊張や不安で押し潰されそうな夜だった。ただ夏海が励ましてくれるから、俺は安心はしないものの無事眠りに付くことは出来た。
万全の状態でイベントに挑む。
今はかなり調子いいと思うから、出来なければ俺はその程度と言うこと。
言い訳はしない。これで、俺がどの程度なのか図ることが出来るのであろう。そして失敗すれば、俺はもう諦めた方が良いだろう。
そう思えるくらいに、とても大事なイベントなのである。
気を抜くことは出来なかった。そんな俺に気付いてか、夏海はやはり優しい言葉を掛けてくれる。彼女の為にも、俺は大成功で飾るんだ。




