ⅡーⅣ
「お兄さん、手を引っ張って来て貰えるかしら」
んなこと言われても、この人の量じゃ俺も着いてく自信ないな……。
「アリスちゃんについて行けるよう頑張ります!」
「お兄ちゃん、夏海と同じです。やっぱ兄妹ですよね。えへへへ」
夏海が周りを、ちょこちょこ跳び回る。
「スタジオはそこよ」
歩いて二分くらいで、ビル的な所に辿り着いた。アリスちゃんは迷わず入って行く。
何かいろんな人に挨拶とかして、スタジオに入るまでに二十分くらい経っていた気がする。
そして遂に、収録が始まる。夏海はさっきまでとは全然違う声で、可愛らしく台詞を読んでいく。
これは兄として、自慢できるな。夏海も頑張ってるんだよな、中学生で仕事してるだけでも凄いよ。
夏海の声に聴き入りながら、俺はその場で座っていた。
「冬樹君? 夏海さんのお兄さんなんだって、今日はありがとね。良かったら、ゲスト出演してみない?」
突然おっさんが話しかけて来た。え? ゲスト出演?
「いいんですか? じゃあ、宜しくお願いします」
いい機会だし、どうせならやっちゃおう。
「出番は殆どないんだけど、重要なキャラだよ」
俺がやるキャラは、過去編にのみ登場するらしい。
主人公のせいで死んでしまい、闇が生まれる原因となった人とか言う設定だった。
台詞は五つくらい、どれもそんなに長い台詞ではなかった。
そして俺は、声優に挑戦する。




