Ⅱ
皆で五月蝿いんだもん。なんで? クラゲ良いじゃん。
まあ、それ以外を見るのも楽しいからいい。例えば何もかもに興味を示す夏海だとか。例えば女性を見て鼻を伸ばす邦朗だとか。
「お兄ちゃん、そんなに見つめないで下さい。夏海に見惚れてしまいました? 嬉しいけど、恥ずかしいです」
どうしてそうなってしまったのだろう。
確かに見てはいたかもしれない。しかし見ていると言うだけで、見惚れるに繋がるのは変じゃないかな。
本気で恥らっているような表情だから、突っ込み辛くて仕方が無い。まさか、本当に本当に本気で言っていたりするのであろうか。
それはさすがに不味い。
今までブラコンをある程度放置してきた。しかし、そろそろ不味くなってきたという訳であろうか。
ならば決意しなければいけないな。妹の為に、ブラコン改善政策を取らなければいけないと考えられる。
「冬樹、そんなに見つめるな。見惚れる気持ちは分かるが、その……なんか……ダメだろ……?」
夏海が落ち着いたので再び観察を始めると、今度は邦朗がそんなことを言い出す。
視線は行っていたかもしれない。しかしどちらかと言えば蔑み笑うような冷たい視線である。見惚れているだとか、そんな熱い視線だったりはしない。
決してそんなものではない、絶対にありえない。
なんかダメだろ? というのもなんとかならないのであろうか。
そして何より、微妙に恥らうような表情をするのは止めて欲しい。本当に俺たちがそんな関係みたいになっているじゃないか。
少なくともきっと、隣で見ている夏海はそう思ってしまうぞ。
「邦朗、あまりふざけるな。夏海に敵視されるからな」
冗談だろうが、俺としても少し厳しい上対応に困る。
だから俺は、そんなブラコンを公認しているかのような脅しをする。本当はこんなこと言いたくないんだよ。
だって効果はある筈だし。
こんなつまらないことで、夏海に敵視されてしまうというのはやはり嫌であろう。俺よりも夏海の方が可愛いし、俺よりも夏海に好かれたいだろうからな。
「どうして、あんまりです。お兄ちゃん、彼氏がいたんですね? それなのに、夏海にあんなことを……。お兄ちゃんのこと信じていたのに、あんまりですよっ!」
二人して俺を陥れようとして、どういうつもりなのだろうか。
素直な夏海のことだから、素直に邦朗のことを睨み付けるかと思った。
素直なところが可愛いのに、素直な妹を取り戻さなければ。その為には、素直でない汚れた邦朗と言う存在を消し去る必要があるか。




