ⅡーⅢ
「うう、痛いです。てかアリスちゃんもお兄ちゃんも、何でそんなの持ち歩いてるんですか!?」
へ? 普通持ち歩くでしょ。
「「逆に、どうして持ち歩かないの?」」
俺とアリスちゃんの声は、完全に重なった。
「いやいや、二人とも何でそんな不思議そうな顔するんですか? 可笑しいです、絶対可笑しいですって」
夏海で遊んでいたら、俺達は駅まで着いてしまった。
「ゆっくり歩き過ぎよ、乗り遅れたらどうするの?」
んなこと言われても……。てか、ゆっくり歩いてたのはアリスちゃんじゃ……けほんけほん。
まあ結局電車も、ギリギリで遅れずに乗り込むことが出来た。
でも俺、電車嫌いなんだよな。この電車はまだ、椅子が少し残ってるからいいけど。つーかそもそも、人とくっ付くのが嫌いだし。だから絶対に、満員電車とか乗りたくない。
「ねえアリスちゃん、電車ってどれくらい乗ってるん?」
それに乗り物に余り長時間乗ってると、凄い気持ち悪くなるんだよな。
「…………」
あれ、聞いてない。もしかしてアリスちゃん、寝ちゃった? えっと、寝るほど遠いの?
そう言うのやるのって、この辺じゃ東京でしょ? そんなに遠く無い筈、うん。
「きゃっ」
電車が揺れた、そして俺の上には夏海が見え……。
パコーン
明らかにわざとであったので、素早くハエ叩きで叩く。
「お兄ちゃん酷いです! 今のは、バランス崩しちゃっただけですよ」
バランス崩すかよ、てかバランス崩して俺の上に来る筈ないだろ……。
「夏海、静かにしなさい」
周りの人に迷惑でしょうが。
「お兄ちゃんの意地悪、ホントは夏海が大好きなくせにぃ。もう、照れちゃってぇ」
俺はハエ叩きを取り出す。
「いや、ごめんなさい。もう叩かないで下さい、それ痛いんですよ」
それからは夏海も、流石に大人しくしていてくれた。
「ほら、ここで降りるわよ」
寝ていたと思っていたアリスちゃんが目を開き、立ち上がった。寝てなかったのかな。
「さて夏海さん、もう迷子にならないで頂戴ね」
何? 夏海、迷子になったことあるの?
「分かってますよ、アリスちゃんについて行けるよう頑張ります!」




