ⅣーⅧ
恥を掻かせる妹。誇れる妹。
だって、お兄ちゃん大好きとか外で言われたらね? それって大分恥ずかしいと思うんだ。恥、恥ずかしいもん。
でも、いろいろ出演している人気声優だし。俺にとって、自慢の妹だよ。CDの売れだって半端ないし、グッズがあるような人って中々いないよ? ライブの姿とかカッコいいし。演技上手いし、声可愛いし変わるし。滅茶苦茶素直でいい子だし、皆の人気者だし。
まあとにかく、夏海は恥だけど誇れる妹。
少なくとも、いい子であることは間違いない。とっても素敵な子だよ、最高の妹。
「そっか。夏海は今も十分いい子だから、もうちょっとだね。人前で話したりすることもあるんだから、言葉は完璧にしないとダメだよ? 何言ってるんだあいつ? みたいに思われちゃうもんね」
優しく諭すように夏海に言ってやった。
「はい、分かりました。しかしそれにしても、お兄ちゃんは卑怯な方ですね。さっきの台詞、カッコ良すぎます。いきなり爽やかボイス、驚くではありませんか。きゅんとするではありませんか」
こう言われて悪い気はしない。この程度の褒め方なら問題ないだろう。
それに夏海は、現場で共演者さんを褒め回っている。いつも笑顔で話すし、褒めるのはとても上手。これはかなり良い事なのだと思う。
「何言ってるんだあいつ? って、いきなり低い声だからビックリしちゃいましたし。声をころころ変えると驚くし、萌えちゃいます。ギャップ萌えです」
恥ずかしがったので、再び歩き出した俺。
しかし、後ろをピッタリ着けながら夏海は熱弁を奮う。
「分かった分かった。もう大丈夫」
このままじゃ止まりそうにない。そう思い俺は、振り返って夏海を静止させる。
耳元で言われちゃうと、どうしても耳に入っちゃうし。恥ずかしくて仕方がないし。
「そうですか? 夏海はお兄ちゃんの素晴らしさを語りたりないのですが」
ずっと言い続けていたくせに。
でも凄いよな。同じことを繰り返す訳ではなく、いろいろと褒めてくれるのだ。言われる側としては恥ずかしくて仕方がない。
「大丈夫。俺はもう大丈夫」
俺の静止に、夏海は少し悲しそうな顔。
残念そうな顔。ではなく、悲しそうな顔をした。
「大丈夫、なんですね? それでは、お兄ちゃんは……園田冬樹の素晴らしさを理解して下さったのですね? もう大丈夫って言いましたもんね」
どうゆうことなのだろう。
園田冬樹の素晴らしさ……? 何を言っているのだろう。
「え、ああ。もう大丈夫」
分からないけど、ここで問い掛けてしまってはまた語り始めてしまう。
そう思い、俺は大丈夫と答えた。再び、”大丈夫”と答えたのだ。




