ⅣーⅦ
褒められているのか貶されているのか微妙なところだな。しかし、本当のことだ。
俺に演技なんか向かないし、嘘なんか吐けない。俺自身もちゃんと理解している。
だって、あの父親の子なのだから。
俺も夏海も嘘は苦手だ。声優をやってみて、キャラを演じることが出来ると分かったが。
しかしアドリブなんて不可能だろう。
自分を偽るのが苦手なのだ、俺達は。
だから、そのキャラクターに成り切ることは出来るらしい。完全にそのキャラになれれば、アドリブでもイケるかも。
「では、夕飯にしましょうか。お兄ちゃん、今日はお兄ちゃんの担当です。夏海の愛妻料理を食べれなくて残念でしょう? 夏海はお兄ちゃんの愛妻料理でハッピーですよ」
それ以上触れないでいてくれたのは、夏海の優しさなのだろう。
夏海くらいにもなれば、嘘を吐く俺のくせも分かるのだろう。夏海くらいにもなれば、俺が困っていることも分かってくれるのだろう。
「愛妻料理とは違うかな。外でもそんな間違った言葉を使ったりしていないか? ちゃんと勉強しないとダメだぞ」
いつも通り接してくれる夏海の優しさ。
だから俺もいつも通りに返した。やる気の無さそうな表情で、いつも通りに返した。
「いえ、夏海は間違っていませんよ。愛妻料理、でしょう? 国語は得意ですもん、大丈夫です」
そんな自信を持って言われても、間違っているとは思うよ。
愛妻、は可笑しいんじゃないかな。国語が得意なのは知っているけどさ。
「それじゃ、俺が間違っているってことかな」
こう言うと、夏海は素直に自分の間違いを認めてくれるのだ。
俺が夏海を知っているように、夏海も俺を知っている。はあ、それが兄妹という物なのだろう。
嘘偽りは全く通用しない。それが兄妹という物なのだろう。
「えっ? それは違います。お兄ちゃんは間違えたりしません。ということは、夏海が間違っているのですか? 国語は得意なのですが、お兄ちゃんが間違っているというんじゃ間違っているのでしょう。だってお兄ちゃんが絶対ですから」
ほら、素直でいい子でしょ? ちゃんと自分の間違えを認める。
「外でそんなこと言っちゃダメだよ? 皆に変な子だと思われちゃうから」
ブラコン全開で歩かれると俺がきついし。
お兄ちゃん思いの優しい妹さん、それならいいんだ。でもブラコン変態妹じゃ困るじゃん。
「はい。分かりました。夏海、お兄ちゃんに恥を掻かせるような妹にはなりません。誇れる妹になって見せますから」
今のところは両方だよね。




