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兄妹だって、愛があるんだから大丈夫ですよね!  作者: ひなた
恐怖だって、ファンなんだから仕方ないですよね!
120/266

ⅣーⅣ

『なーちゃんには何も言わないで下さいね? 何も言わずに、冬樹さんはなーちゃんを安心させてあげればいいのです。だから、余計なシスコンはやめて下さい』

 唯織さんが言っている意味が分からなかった。

 分からなかったが、本能的に逆らってはいけないと思った。分からなかったから、従うべきだと考えた。

『普通の方だと信じていましたのに。いくらシスコンとはいえ、……っ』

 しかし、本当に従ってるだけでいいのだろうか。

 俺はただ従っているだけじゃダメなんじゃないか? そんなんだから、俺はダメなんじゃないか?

 でも口は動かない。頭も働かない。

 唯織さんの恐怖で、全ていっぱいいっぱいだった。

『常識くらいは心得ていると思いました』

 言われっぱなしじゃダメだ。

 そんなんだから、俺はダメなんだ。恐怖に負けず言い返すんだ、頑張れ俺。

『なーちゃんはなぜあそこまでのブラコンでも許されるか分かりますか? 可愛いからですよ。つまりなーちゃん以外では許されないことなのです』

 こんな言葉に、男が怖がっていてどうするんだ。

 しかしどうしてだろう。どうしてなんだろう。

 なんだか背筋がゾッとする。唯織さんの声に、一々体が反応してしまう。恐怖で無意識に怯えてしまう。

 理由なんて分からない。

 唯織さんの低い声くらい、普段も聞く機会はある筈だ。

 だから、こんなに恐れる必要なんてないのだろう。

 それに声が聞こえるのは電話越し。この場に唯織さん本人がいる訳でもない。

 ならどうして。それならどうして、俺はこんなに怯えているのだろう。そもそも、俺は何に怯えているのだろう。

『喋らないで下さい』

 勇気を出して俺が口を開くと、そのタイミングで唯織さんのその声が。

 どうして分かるのだろうか。

 喋ろうとした、それだけで喋った訳ではない。ならどうして、どうやって唯織さんは分かっているのだろうか。

 まさか、俺が口を開いた。それが見えている訳でもあるまい?

『余計なことを考える必要はありません。なーちゃんはワタシのものであるという事実を、改めて確認してくれればいいのです。それでは』

 冷たくそう言われると、電話はプツンと切れてしまった。

「お兄ちゃん、どうしたんですか? 怖い顔していましたけど」

 心から心配そうな表情で、夏海は俺のことを見てくれる。

 唯織さんの声が冷たかっただけに、その声は更に温かく感じた。

 温かさが嬉しくて、その温かさに触れたくて。俺は夏海の右手を両手で握り締めていた。

 携帯を床に落とし、夏海の手を必死に握る。

 その温かい体温を感じる。

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