ⅢーⅥ
「冬樹さんは、もっとファンの為に何かしたりしてくれないんですか? ファンサービス、お願いしますよ。まあ、ショコラティエは少しやり過ぎな気もしますが。頑張り過ぎて、心配になるくらいですもん」
そんなこと言いながらも、横島さんはとても嬉しそうだった。
本当にショコラティエが大好きなのだろう。俺も欲しいな、それくらいの大ファンが。
実際、ライブとかやったら嬉しいんだろうね。大きな会場、そこにいる人はみんな自分のことが好き。緊張もするだろうけど、もっともっと嬉しいんだろうね。
そう思うと、ライブも少し憧れところがある。ただそれで人が集まらなかったら、そうゆう不安もあるんだろう。
「俺も頑張りたいとは思う。でも、ファンサービスって何をすればいいのか。二人は人気だからいろいろ話を持ち掛けて貰えるけど」
残念ながら、俺にはそんな話来ないもん。
やりたくたって、やらせて貰えない。だって企画とかで頑張るのは本人だけど、企画するのは本人じゃない。それに、頑張るのは本人だけじゃないから。
協力しなきゃ、何も出来ないもん。俺一人じゃ無理だよ。
「頑張りたいと思うんですか? だったら出来る筈です。街で握手して売り込むとか、色々ある筈です」
なんかそれって、声優じゃない気がする。
アイドルとか歌手だったら聞くけどね? 路上ライブから始まった、みたいなこと。でも声優じゃあないでしょ。
「そうかな」
正直、そこまで頑張ろうと言う気はない。
頑張りたいとは思う。俺の行動で喜んでくれる人がいるなら、喜んでやりたいとは思う。
しかし街で売り込んで、喜ぶ人はいるのだろうか。
街を歩く人は俺のことなど知らない。その人たちは、俺と握手して嬉しいと感じる筈がない。
「それか、ブログとか始めませんか? ちょっとしたことでも冬樹さんがそこに書いてくれれば、ファンは反応します。少なくとも、あたしはすぐに確認します」
ブログとか、そうゆうのも苦手なんだよね。
やったことないけど、反応されないと多分凹むよね。コメント貰えないだけで悲しくなってやめちゃいそうだもん。俺には向いてないかな。
それ言ったら、声優という職業自体向いていなそうだけど。
「夏海も見ますよ。お兄ちゃんの活動、夏海は全て確認します」
作業の手を休めずに、下を向いたままだが夏海もそう言ってくれた。
この様子を見ると、やっぱり七光りな気がしてくる。俺のファンなんて、ただの夏海ファンの序でなんじゃないかって。
実際、そりゃそうなんだろうけどさ。




