ⅡーⅠ
その後寝てないまま学校に行った。
それで凄く疲れたのだが、まだ水曜日だ。
残り二日は徹夜などせず、土曜日に備えて規則正しい生活を。顔色悪いよ、なんて言わせない。
そうして、運命の土曜日がやって来た。
「お兄ちゃん、今日本当に学校休みなんですね!」
制服ではなく私服を着て出てきた俺を見て、夏海は嬉しそうに言う。まあ基本的に、土曜日は学校だからな。
「夏海、何時からだ?」
てか収録って、どれくらい掛かるんだろう。一話三十分のアニメだったら、倍の一時間くらいなのか?
「えっと、アリスちゃんが迎えに来るんで詳しくは覚えてません。確か……九時くらいだった気がします」
今は七時半ちょっと、まだ余裕あるよな。
「しかし、流石お兄ちゃんです。洋服は全く考えないんですね、その格好やる気なさ過ぎじゃないですか?」
そうかな、でもどうせろくな服ないし。
「いけないのか? だったらもう少しちゃんとしたの、持ってくるけどさ……」
「いえ、それで大丈夫だと思います。困ったらアリスちゃんが何とかしてくれますしね」
着替えるのめんどくさいし、大丈夫ならこれでいいや。俺はふらふらと階段を下りて、顔を洗った。
服はともかく、眠そうな顔は不味いよな。顔に水を掛け捲っていると、ようやくシャキッとしてきた。
「あの……今日の朝ご飯は夏海が作っていいですか?」
「え? いいけど」
普段食事は、俺が作っている。夏海はいつも大変そうにしてたし(仕事してたんなら仕方ない)、両親は殆ど会えないしな……。
母親は夏海が幼稚園生だったと言うのに浮気をして無理やり離婚、俺達と会うことは全くと言っていいほどない。
父親は俺達二人を引き取り、一生懸命働いている。離婚のときに慰謝料はかなり貰えた筈だが、三人で何年も生活していくには厳しい。
その為それは全て貯金に回し、夜遅くまで働いている。深夜に帰ってくるとご飯を食べてお風呂に入って、すぐに部屋で眠ってしまう。疲れているのだし、俺達に構ってられないのも仕方がない。
「さあさあお楽しみください、夏海特製高級スペシャルディナーです」
ああ、もう出来たんだ。夏海はご飯とみそ汁と焼き鮭とほうれん草のおひたしとか言う、ザ・和食みたいな料理を並べていった。
「ディナーって、これ夕飯じゃないだろ?」
朝食はブレックファーストだっけ?
「ん? それはいいんですよ。だってディナーの方が、響きが高級そうじゃないですか!」
知らんがな!
「でもこれ、凄い和食だよ?」
「えー、そうですけど……。だって家庭科の授業でやったレシピが、これだったんですもん」
他にもいろいろやってるだろ。
俺達がなんやかんや話しながらゆっくり食事を味わっていると、ピンポーンっと言う音が玄関から聞こえてきた。まだ八時前だぜ……?




