ⅡーⅩ
しかし唯織さんの攻撃は、俺なんかが避けられるものではなかった。唯織さんの言葉に、俺の豆腐メンタルは傷付けられる。最早ボロボロだった。
恐ろしい二人の笑みに、俺は頭を上げるのがかなり恐怖だった。でもこのまま虫扱いされるのも嫌なので、恐怖に負けずに頭を上げる。
そして気付いたんだ。
恐ろしい笑みを浮かべていたのは、二人だけじゃなかったんだ。我が妹、夏海もだったんだ。
「お兄ちゃん、恥ずかしがる姿とっても可愛かったです。なでなでも嬉しかったんですけど、それはそれで超可愛いですね。珍しくお兄ちゃんが素直になってくれた。それは、夏海にとって最高の記念です。しかしやっぱり、恥らうお兄ちゃんの可愛さは半端じゃありませんよね。いおは素直じゃないからあんな事言ってますけど、きっと可愛さに負けないようにですよ。ずっとお兄ちゃんにあの体勢でいられると、嬉しくって鼻血出ちゃいますもん」
熱弁を始める夏海。滅茶苦茶怖かったので、俺は何とか聞かないように努力しようとしていた。
しかしさすがは妹、それも分かっているらしい。夏海に手を捕まれていて、俺は耳を塞ぐことも出来ない。
「ワタシ的には、冬樹さんよりもなーちゃんの方が可愛くて仕方がありませんけどね。なーちゃんこそワタシの天使です」
まあ、普通の人の感性で行ったらそうだろう。夏海より俺の方が可愛いっていう人なんて、かなり激レアだと思うぞ。
それに、夏海は天使だと……俺も思う。
「いえいえ、夏海よりも絶対お兄ちゃんの方が可愛いです。カッコいいのは当然として、可愛さまで兼ね備えているんですから。神、天使。お兄ちゃんこそ全ての頂点ですよっ」
可愛さまで兼ね備えている? 今のところ、そんなこと言うのは二人くらいしか見当たらないね。
ありがたいことに、カッコいいは言われたりするけどさ。一般のファンの方からカッコいいとか言われると、結構豆腐メンタルが再生されるよね。
「あたしにとっては夏海教が正義です。夏海教の教えに従いますから、夏海様と冬樹さんはともに頂点に君臨するお方となります」
え? 夏海教の教えって、俺まで頂点に君臨しちゃうんだ……。
「お兄ちゃんはどう思いますか? 頂点はお兄ちゃんだと思うんですけど。お兄ちゃんの意見を聞かせて下さい」
どうしてこのタイミングで俺に聞く気になったんだろう。
俺が一番、俺がそう答えるとでも思ったのか。そんな訳がないじゃないか。
「この中で言ったら、唯織さんが一番凄いと思うな」




