ⅡーⅥ
夏海にデレデレしてた横島さんも、唯織さんが来た途端ピシッとしている。動きが最早同一人物とは言えない程だった。
多分、変態が団員に変わったからだろう。
神を相手にするか上司を相手にするか、そんな感じだと考えていいのだろうか。
だがそれで行くと、唯織さんファンの色が強いのかな。二人いる中で、団っぽいキャラしてるんだから。
それとも、唯織さんってのはレアな存在だから? 滅茶苦茶大人気だし、きっと忙しいだろうし。
それに初対面だもんね。ファンなんだから、一緒にいられるなんてね? みたいな感じなのかな。それで固い、ってな感じもあるよね。
団員キャラしてるんじゃなくて、普通に緊張しちゃってるような。
夏海は初対面じゃないからともかく、唯織さんみたいな大人気声優さんね。
まあ、慣れればきっと夏海相手以上に崩れるだろう。唯織さんはそんな存在だ、と俺は認識している。
「団長だなんて、呼び慣れていないもんですから戸惑いますね。普通に唯織とか呼んでくれちゃって構いませんよ」
照れ臭そうに頬を掻き、唯織さんはそんなことを言った。しかし仕草を見る限り、それはわざとなんじゃないかなと思う。
だってあの唯織さんが、そんなことを素でしたりする訳がない。計算された美少女、演じられた美少女。そんなイメージがあるくらいなんだから。
いやまあ、失礼なのは分かってるよ? でも唯織さんは何だか、素直で子供な感じがしないからさ。
確かにいい人ではあるけど、大人な感じじゃん。気のせい? そんなことないよね。うん、そんなことないよ。
「い、いおっ! 唯織だなんて、呼べる筈がありません。我らが団長を呼び捨てだなんて」
こっちは物凄いけど、演技じゃないんじゃないかなって思う。
だって緊張するでしょ? 本人を前に呼び捨てで、なんて出来る訳ないでしょ? その気持ちは誰だって分かるもん。
「撮影の中でとか、ライブでとかならともかく……。仕事中ですらないのに団長ってのは、ちょっと嬉しくありませんね。ファンでいてくれてる、それは勿論嬉しいんですけど」
この人さすがだよな。
本当にプロだと思う。声優じゃなくても、この人はかなりの才能だと思うね。演じるものは勿論、それだけにも限らずね。
だってアドリブでこれでしょ? 頭良いんだろうね。
「ごめんなさい。唯織さんを困らせていたなんて、ファン失格ですよね。そんなやつ、死んだ方がいいですか? ごめんなさい」
また始まったや……。
夏海教では死とかそんなの禁止、そうやって注意されただろうに。それに夏海教じゃなくたって、死とか言うのはよくないと思うんだ。
「死なんて言わないで下さい! 前にも言いましたよね? そうゆう人は、夏海は”嫌いです”」




