ⅡーⅤ
「お兄ちゃんの企画について話し合ってたんです」
部屋に全員が入ったのを見ると、夏海は突然そんなことを言った。
俺の企画? 間違ってはないけど、ちょっと可笑しいような気がするよね。
不思議に思いながらも、俺は座ったいた場所に再び座った。横島さんも元々座っていた場所、唯織さんは夏海のすぐ隣に座った。
「あっ、CDの発売とか考えてるらしいですよね。でもそれって、なーちゃんが考えることなんですか? 可愛いからいいと思いますが」
そうだよね! 夏海が考えることではないと思うんだ。
良かった、俺は可笑しくなかったよ。さすがは唯織さん、その辺は普通の常識人なんだよね。
ただ、可愛いからいいの理論はダメな気がするけど。
だって夏海の何に対しても、唯織さんは可愛いからで許可しちゃうじゃないか。まあ、それはそれで唯織さんらしいっちゃらしいんだけど。
「はい、妹として夏海が考えるべきだと思いますよ。それに、お兄ちゃんのファンと言ったら夏海でしょう? そんなの誰もが分かっている筈ですから」
妹として? ちょっとよく分からないかな。
それに、ファンと言ったらの意味が分からないよね。確かに俺のことを五月蝿く言っているらしいが。
そのせいで、夏海のブラコンは結構有名だって聞くね。ああ恥ずかしい。
「そうですね。なーちゃんらしくていいと思いますよ」
楽しそうに唯織さんは笑う。
この人、他人事だからってニヤニヤと。
「それで、こんなのどうですか? 二人で絵を描いたんです」
自慢げに夏海は二枚の絵を唯織さんに突き付ける。
一生懸命描いていた、あの森の絵だ……。
「何かが違うと思います。しかしまあ、こんなのは歌詞によると思いますよ」
適当に興味ないとでも言うように、唯織さんはそんな意見をした。
でも確かに、曲によるよね? だよね。だから、これは曲が出来てからでいいんじゃないかな。
序でに言えば、プロの人に任せておけばいいんじゃないかな。
それとも、プロの人はお金が掛かるから? 俺には勿体無いということかな。
「そうですか……。しかしまあ、いおがそう言うんだったらそうなんでしょうね」
素直な夏海は、唯織さんに言われてすぐに納得したようだ。
俺の言葉なんて、ほんの少しも届かなかったくせに。いやまあ、正しく届いたときには従ってくれるんだよ? うん。
ただ、中々俺の言葉が正しく伝わることはないようで。
同じ日本語を使っている筈なのに……。いやぁ、日本語ってやっぱ難しいね。
「団長の言葉は絶対ですから」




