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そして結局俺は嵌ってしまい、外は明るくなってきた。げ、寝てない……。
「もう一度確認しよう、夏海は出ているんだよな?」
まさか、兄である俺が分からない筈がないじゃないか!
「はい、当然です。もうギブアップですか?」
「……う……ぁ、……ああ。ギブアップだ」
クソ、今度こそ当たると思ったのに。
「正解は、子猫ちゃん役でした!凄いでしょう。お兄ちゃん、夏海をもっと褒めて下さい」
子猫ちゃんと言うのは、主人公の隣の家に住む小学生なのだが……って、え!?
「本当に? 本当に子猫ちゃん役なのか!?」
嘘だろ!? だって夏海とも小鳥ちゃんとも全然違うじゃないか!
「何なら今、子猫ちゃんの台詞何か読みましょうか?」
夏海は勝ち誇ったような笑みを浮かべ、偉そうに言って来る。
「ああ、やってみてくれ」
しかし俺はどうしても信じられなかったので本物を聞きたく思い、仕方がな~く負けを認めた。いや、ギブアップした時点で認めてるか。
「えっと、これにしましょう。冬樹さん、大好きです。だから早く、あたしの☓☓を**して下さい。……あっ……早く……早くしてくれないと……あたし……あたし……!」
パコーン
夏海は何だか可笑しなことを言い出すので、俺は頭をハエ叩きで叩いた。こういう時の為に、ハエ叩きは常に持っておかないとね。
「なあ夏海、いつそんな台詞があったんだ? お兄ちゃんに教えてくれるかな」
「え? ありませんでしたか? ごめんなさい、夏海の記憶が間違っていたのかもしれません」
記憶が間違ってたって……。てかそもそも声がついてる部分は、名前を呼んだりしないじゃないか。
それと女の子が、そう言う事言っちゃダメだよ。いや、そう言うのもあるかもしれないけど……。
「でもまあ、声は子猫ちゃんだったね。そこは、凄いと思うよ」
普段は大人しそうな綺麗な声なのに(セリフはともかく)、元気で子供っぽい小学生の声で喋れるんだから。
だからせめて、子猫ちゃんの口調にするくらいしたら?
「まあお兄ちゃんも、夏海の凄さが分かりましたね。週末の収録、気合入れて行きますよ! 絶対に、お兄ちゃんをメロメロにしてやりますから」
「はいはい」
俺は夏海を軽くあしらって、自室に戻っていった。




