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日々の記憶。  作者: ちびやな@やなぎ
8/14

たまには喧嘩も。

「・・・で? 気は済んだか?」

 ひたすら愚痴とも悪口ともつかないことをわめき続けていた私がさすがに疲れて言葉をとぎれさせると、相棒のいかにものんびりとした声が滑り込む。

「・・・まぁ、だいたいは」

「ならよし」

 もう少し言ってやりたい気もするけれど、疲れたのに加えて相棒の口調に気勢をそがれてうなずいた。すると、彼は私の頭を軽くなでてなんだか嬉しそうに笑う。

「ずいぶんしゃべったからのど渇いただろ? なんか持ってくるよ」

「・・・私が今まで言ったことに対する反論なり弁解は?」

「喉を潤しながらでも遅くはないだろ?」

 眉間にしわを寄せた私の言い分をさらりとかわして、相棒は台所に姿を消した。あんまり相手にされてないのかなぁ、と思いつつため息をつく。確かに奴から見れば私はいつまでも手のかかる子供なんだろうけど。

「何をため息なんてついてるかね、こいつは」

 戻ってきた相棒が差し出したのは、インスタントのアイスココア。普段あんまり甘いものは飲まないけど、喉の調子が悪いときはココアを飲むのが好きだと知っているからだ。

 言った本人にも半分以上が八つ当たりだとわかっている悪口を言われ続けた後でも、こんな風にさりげなく気を回してくれる。そんな優しさが嬉しいのか居心地が悪いのか、よくわからない。もごもごとお礼を言って、一口すする。

 グラスの色からして自分にはアイスコーヒーを持ってきたらしい相棒は、はす向かいのソファに腰を下ろす。

「で、お前の言ったことに関してだけどな」

 前置きをするように、そこでいったん言葉をきった相棒は、やっぱりなんだか嬉しそうな様子だ。

「内容にたいしてあれこれ言う前に、正直、けっこう嬉しかったな」

「・・・あんたマゾ?」

 思わず呟くと、奴はさすがに驚いたのか飲みかけていたアイスコーヒーにむせた。ひとしきり咳き込んでから、苦笑めいた表情になる。

「いや、そういうんじゃなくて・・・。お前が俺に面と向かってあそこが気にくわない、これは嫌がらせだろう、って意見してきたの初めてだろ? だから、やっとそういうのもみせてくれるようになったんだな、と思ってさ」

 予想外の返事に思わず目をぱちくりさせてしまう。こいつ、そんな風に考えてたのか。

「お前、外面いいからな。それは別に悪いことじゃないし社交術としてはいいと思うんだ。だけど、一緒に暮らしてる俺にまでいつまで猫かぶってるんだろうな、と心配してたからさ。本音みせてくれたのが嬉しいというか、安心したというか・・・」

 そんな風に思われているとは思ってもみなかったことを言われて、意味を理解するのに少し手間取った。でも、意味が頭に浸透してくると自然と口元がゆるんでしまう。

「ありがと」

「うん?」

「なんか嬉しいから」

 照れ隠しにココアを飲みながらそれだけいうと、相棒も「そっか」とだけ言って微笑む。


 ココアの甘さが嬉しい、午後のひとときに思い出したこと。

お読みいただきありがとうございます♪


喧嘩すらできない相手とはなかなか一緒に生活することはできないですよね。

こんな風にほのぼのと終わると喧嘩なのかは疑問ですがw

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