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ALCZ  作者: 蒼巻
第一章 イラニドロの森
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第6話 幼馴染

「ロードって何かと結婚の話を持ち出すよな」

「あーあれはなぁ」

ロードが何やら嬉しそうに笑う。

「あいつが俺の嫁さんになりたいって言ったんだよ」


「…え、ティリエが?」

「ん?思ったより驚かないんだな」

「最初に会った時ロードが、婚約者ですって言ってただろ?ティリエに怒鳴られてたけど」

「そうだったっけ。いやぁ、いつものことすぎて覚えてないな」

どこまでもいい加減な奴だな。

婚約者って言って忘れるんだぜ?ロードとだけは結婚したくないな。


「10年ぐらい前だったかな。俺は都市に出る前だから13歳か。7歳ぐらいだったティリエが、『私ロードのお嫁さんになる』って言い張ってたんだぜ?あの頃は可愛かったなぁっ…」


途中からロードが笑いをこらえて言葉を詰まらせる。お嫁さんになる、か。そう言う純粋な美少女を想像するのは簡単だったが、それをティリエとイコールで結ぶには俺は経験値が足りな過ぎた。


「あのティリエにそこまで言わすなんて、よっぽど仲良かったんだな」

「まあな。カリシエって知ってるか?」

「ティリエの兄貴の?」

「そうだ。あいつと俺は同期でな、よく二人でガルグのじいさんに剣を習ってた。俺はさぼって大体ティリエと遊んでたけどな。反対にカリシエはくそ真面目だったから、確かサボったのはティリエの誕生日かなんかの時だけだったぜ。あとはひたすら稽古稽古稽古。あんまり構ってもらえなかったもんだから、ティリエは俺に懐いてた」


なるほど。両親はティリエが生まれてすぐ病気で他界したそうだから、きっと寂しかったんだろうな。兄貴もなかなか冷酷だ。馬鹿かもしれないけど、隣にいるのが凄くいい奴に見える。


「でもほら、あれであいつも娘だしな?兄弟そろって頭もいいから、そのうちに俺が馬鹿で兄貴が正解だって気付いて、恥ずかしさもあって離れてったんじゃないか?」

「最高に気の毒な話だな」

「同情してくれるのかーいいやつだなお前」

再び捕獲されそうになったのを俺はひょいとかわした。脱出が一苦労だからな。


そして俺が思うに、ティリエは恥ずかしいというよりは、人生最大の汚点を抹消したいってだけじゃないのか。いやまぁ、会って数日の俺が幼なじみに言うのもなんだから、口には出さないけど。


「ほらほら、さっさと終わらせんと日が暮れるぞ。ここらはクルーガの縄張りらしいしな」

「うわっ、早く言えよそういうことは!」

「まさか丸腰で来たのか?」

「仕方ないだろ、ひびが入ったんだから。火打石ならあるけど」

「ラエブは火打石じゃ逃げないぞ?」

「脅すなよ。その時はロードを盾に逃げるさ」



口数を減らしつつ、俺達は黙々と作業を進めた。午前中の畑いじりよりこっちの方がいいな。しゃがみっぱなしの姿勢はどうも腰にくるんだ。それに修理されていくのは目に見えるからやる気も出る。


なんとか日が暮れる前に修理を終えて、俺達は足早に村に戻った。やれやれ、招かざる客に遭わなくてよかった。



「これからどうするんだ、アルツ」

「ガルグのところに寄っていく。なんか渡したいものがあるらしいんだ」

ふうん、とロードが腕を組む。

「俺も行っていいか?打ち直しが終わったってことだろ」

「本当に剣が好きなんだな」

「まぁな。いやでも、俺の恋人はハーベストだけどな」

俺は渇いた笑いを返しておいた。ハーベストがストレスの溜めすぎで刃こぼれしないか心配だ。




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