⑷ 私のお守り
新年を迎えた。
大学の願書受付が始まった。
入試まで、あと1ヵ月。
昨年8月の模試では、目標の偏差値50に届いたものの、
10月の目標54に対して52。
12月の目標58に対して55。
と、残念ながら目標に届かない。
2月の入試に向けて、偏差値62を目標としていたが、残念ながら難しい。
だが、過去問から傾向を掴み、その対策としての勉強を進めてきた。
つまり、全国模試の結果よりも入試の方が期待出来る……と思いたい。
そこで過去問から得意とする問題が出される傾向の大学を調べ、可能なかぎり受けさせる事にした。
ただ明里の体力、集中力が持つか心配である。
「明里は大丈夫かなぁ? 全部で7校受験する事になるけど」
「大丈夫!」
「受験する大学は、合格圏に入っている大学が2校、目標のM大レベルの大学が5校」
「その目標大学の中で、1校でも大当たりが出れば、大成功だね」
なかなか開き直っている……余計な心配のようだ。
「そういえば、前にあげた『ご褒美の券』まだ使ってないじゃないか」
「あれは私のお守りなの!」
「……そう」
・・・・・・
2月に入った。
私立大学の一般入試が始まった。
16日間の中で7校受験する。
試験日が続いてしまい、受験生にとっては大変だ。
東京はこの時期が一番寒い。
入試に向かう日は「お守り」と言って使い捨てカイロを渡した。
明里は少し困った表情を浮かべていたが「行ってきます」と言って受け取った。
余計なお世話と思いながらも、今の私がしてあげられる事といったら、そんな事ぐらいしかない。
・・・・・・
明里が入試を終えて帰ってきた。疲れた表情だ。
この入試期間、私が食事等の準備を行う事にした。
その日の試験が終わったら試験の事は忘れる事。
帰ってきたら頭と体を休める事。
それを明里に言い渡した。
・・・・・・
2月16日、明里の入試が全て終わった。後は結果を待つのみ。
「お疲れ様」
「ありがとうございます。お世話様です」
「手ごたえは?」
「なんか頭ん中真っ白で、全然思い出せない」
「それでいいです」
「おわったー」
「やれやれ……何かおいしいもの、食べに行こうか?」
「いくいくいく!」
「何がいい?」
「んーあっ、お好み焼きがいい」
「えぇ? レストランにでも……」
「お好み焼きがいい! 焼きそばも頼んで……私が作りたい!」
「わかった。駅前のお好み焼き屋さんかな」
「そこー」
「じゃあ、すぐ出発しよう」
「おじさんとデートぉー♪」
「お好み焼きで喜んでくれる。明里は燃費いーなー」
「?」
明里さん。
お疲れさまでした。
あとは結果を待つのみ。
次回:しかしまあ、なんだねぇ




