⑷ デモに向けて
本日の検討会議で、前回の事案についての報告をしてもらった。
最初にリーダー君のアイディアで、3Dプリンターそのものを容器に入れて気圧を下げるという件について、千広に確認してもらったところ、噴射させるαとβを霧上の状態で測定した結果、0.7気圧で気化が始まり、マージンを持たせると下げられる気圧は0.8気圧との事。
空気によって吹き飛ばされる問題がどの程度改善されるか、装置が大がかりになる事を考慮すると、疑問の声があがった。
次に、インテリ君のアイディアで、ヘッドからの噴射速度を上げる実験だが、今のαとβの粘性から、これ以上噴射速度を上げると横に広がってしまい、うまくいかない事がわかった。
次に、碧が疑問を投げたAヘッドとBヘッド、どちらがαを巻き上げているのか?
綾乃がハイスピードカメラで確認した結果、想像どおり両方との事。
だとしたら、AヘッドとBヘッドを縦に並べ、2つのヘッドを離す事で、この問題は軽減する。
そしてそのメカは、リーダー君によって早々に完成した。
それと、ヘッドを縦に並べる事には、もう1つ利点があった。
2つの液体の投下順序は、αが最初で、次にβを投下する。
それは、αとβを同じ量で混合させるとしても、αの中にβを少しずつ混ぜていくのと、βの中にαを少しずつ混ぜて行くのでは、固体化した時の物理特性が異なる為である。
レールに従ってAヘッドとBヘッドが走り、αとβを落すのだが、それは片道となり、帰りは落さずに戻る仕様となる。
しかし、ヘッドを縦に並べるのであれば、往復投下が可能である。
つまり、造形物の作成時間が半分となる。
これは、すばらしい。
さすがは碧だ。
そして最後に、綾乃のアイディア、ヘッドの形状を、空気抵抗を考慮した新幹線型にしましょう。
流力シミュレーションで出した形状でのヘッドを作成した結果、2つのヘッドによって巻き上げられる問題は20%軽減した。
碧の縦型ヘッドのアイディアと合わせると、更に改善される事が見込まれる。
さすがは女性陣。
私は伝えた。
「よし、この内容でブラシュアップして、見せられるデモにしましょう」
・・・・・・
会社から帰ると、いつものようにキッチンテーブルで明里は勉強していた。
過去問の答え合わせを終えて、今週一杯、質問授業で来週から試験との事。
夕食を食べながら、明里は、授業の様子を話してくれた。
「先生によっても色々だけど、『前期授業のまとめ』とか言って、黒板に色々書いてくれる先生がいて、これって、この部分出しますよ~って教えてくれてんのかな~」
「うん、まあ、多分そうでしょう」
「うちの大学、出席取らないから、普段は教室の2/3ぐらいしかいないんだけど、今週は教室一杯で、驚いちゃった」
「大学になると、単位取れなかった学生が、一緒に受講しているからねぇ」
「今日、友達3人で、内容の的を絞って先生の研究室に質問しに行ったんだけど」
「それはすばらしい」
「な~んか、身を乗り出して教えてくれる内容と、あまり相手にしてくれない内容があって、相手にしてくれない内容って、試験に出ないって考えていいのかな~」
「ああ、たぶん出ないと思う。ただ、身を乗り出した内容が出るかどうかは解らない。どうも大学の先生って、試験内容と関係なく、突然ボルテージが上がってしまう先生、多いから」
「そ~なんだ~」
「まあ、明里は一生懸命勉強してきたから、頭の中を整理して試験に臨みましょう」
「はい」
その日、明里は遅くまで試験勉強していた。
私はベッドで、寂しく一人で寝た。
次回:なんで気付かなかった




