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第二話 氷の騎士ウォッチング

 姫様の興味の対象がヨシュア、宰相候補に移りまあ当然だと言うべきか当たり前だなと思う。あんな負け方したんじゃ誰だって目を背けたくなる。


 氷の騎士は軍師の私にみっともなく破れむしろ女性たちから嫌われるようになった。

 自業自得だが流石に可哀想である。

 彼はそのショックで人が変わったようにぶつかった女性に恐れを抱くように謝罪するようになったという。

 良い傾向である。だが彼の腰巾着であった宰相候補のヨシュアはメキメキと頭角をあらわし彼の取り巻きが氷の騎士ギルバートをいじめるようになった。


 マジでごめんなさい。罪悪感は微塵もありませんが。


 だが自身が蒔いた種である自覚はあった。

 このままだと軍師の私が処罰される恐れがある。


 私は帝国での姿をとり宰相候補のヨシュアに接触した。

 思いの外歓迎されたが。いやアンタの親友を負かした人ですよ? 歓迎するっておかしくない? まさか。


 ヨシュアが言うにはギルバートの尻拭いはいつも自分だった事。

 そして親友ではないのにそういう扱いを求められていた事。

 そもそも上から目線が気に入らなかった事。


 これらをつらつらと並び立てあげつらう。


 どうやら予想は当たっていたらしい。

 本当に嫌いだったのかと納得もした。ギスギスしているなあ。


 だからお願いをしてみる事にした。

 多分、私がギルバートを負かした事に恩恵を得たなら聞いてくれるかもしれないと半分本気で。


 私が帝国の王子を試合で負かした事で皇帝からなんらかの処罰を下るのではないかと不安を口にした。


 それに対してヨシュアはそれはない。もしそのような事があれば僕が進言するとまで言ってくれた。


 しかしそれでヨシュア様の身になにかあればと口にする。

 ヨシュアは気にしなくて良い。皇帝陛下は今回の件で王子を南に行かす事に決めたらしいと知られてない情報まで教えてくれた。


 南。暖かい地域で村や魔物が多くあるという実質流刑に近い。


 私は皇帝陛下が王子を見限ったと知るや否や心の中でガッツポーズし部屋を一礼して去った。


 お願いもきいてもらえたし、


「さて」


 私は変身魔法で帝国の女中に変身すると氷の騎士ウォッチングを開始した。




 軍師の姿をしている時、首筋にチリッとした【殺気】を感じ視線を探すとニ階の窓から私を見下ろす氷の騎士がいた。


 今は地獄の訓練の指導の最中。

 帝国の部下は相変わらず狂人揃いだが最近になってやっと心を開いてきてくれた段階かなとは思っている。

 それでも皇帝絶対という姿勢は崩れないが今はそれでも良いだろうと思っている。

 にこやかな笑顔を返し手を振ると顔を顰めて立ち去って行った。

 かなり嫌われたな私は。


 変身魔法で女中の姿で紛れ込む。

 氷の騎士は前ほど人気ではなくなりたそがれているのを何度か見かけるようになった。

 辺りには嫌いでもひっつかれていた女の囲いは前ほどというかほぼ消え去っている。


 勿論、私から声をかけるつもりはなくせっせと女中の仕事を見つけて仕事をする。働き者だな自分で言うのもアレだがオーバーワークだろ絶対。

 女騎士もやって、軍師もやって、女中もやる。普通なら体力が足りないが私は元はダークエルフなのでそこを賄えるだけの技量はあるつもりだ。


 まさか負かした相手がすぐ近くにいるとは思わないだろう。内心クックッと笑った。


 そして姫様の恋はというとヨシュアのようなタイプ(腹黒)ではなく誠実の塊のような騎士団長に恋をしていた。メイドから仕入れた話だが。


 私もこれなら安心だが既婚者と聞いた時にはビシリと何かが割れた。


 ・・・不倫はいけませんよ、姫様。


 騎士団長にはいずれにしろ気をもたせすぎるところをあらためていただこう。

 ただ本当に誠実な人なので心が締め付けられるのだが。

 騎士団長とは何回か帝国の姿で面識があり、その強さ【剣聖】からはいずれは魔王を倒してしまうやも知れぬと恐れ抱いていた。

 騎士団長にはそうだな、結婚しているし後方支援に回ってもらおう。

 そう考えておいておく。


 そして魔王様への定期連絡のため王国の情報を部下から掻き集めるが至って不安はないし脅威もないわけだが。


 最近視線を感じるのは気のせいか。特に女中の時と女騎士の時にだが。


 女騎士と女中の時の違いは服装と髪型と印象くらいだ。


 変身魔法には限度がある。人間の身体に作り替えたってのもあるだろうが変身魔法そのものに限度があるのだろう。


 だから私は他者に与える印象を操作する方向に変身魔法をかけている。


 ヨシュアのところでせっせと女中として仕事をしていると肩に手を回され薔薇を間違って切り落としてしまった。


 えっ!? 何? なんなの!?


「君、薔薇を切るより割の良い仕事をしないかい?」


 この手の速さヨシュア、君ってやつは。

 実際ヨシュアのこの噂は聞いている。

 ギルバートが跳ね除けた女を自分の囲いにしギルバートに対して印象操作している事も。ヨシュア信者はハーレムにも寛容であり自身を跳ね除けたギルバートに対し恨みを抱く女性はそう少なくは無い。

 驚きに硬直していると背後から靴音が近づいてくる。


「おい」


「ったく、誰かと思えばギルじゃないか」


 ようやく手を離してくれた事にホッとする。


「呼ばれていたぞ・・・ヨシュア」


「ホントに僕の事をなんだと・・・まあ良い。あとで君からも話を聞かせてもらうからな」


 ヨシュアが立ち去るまで私は後ろを振り向けなかった。そしていまだ立ち去らないギルバートに緊張していた。


 ドッドッドッ


 心拍数が上がり心臓の音がやけにうるさい。


(もし、女騎士と女中の正体がバレていたら、もしかして全部の正体を見透かされていたら・・・!?)


 ダークエルフの私。


 冒険者であった今は姫様護衛の女騎士。


 王国の情報携えたフリーの傭兵だったという設定の軍師。


 そして氷の騎士ウォッチングのための女中。



 これら全てバレていたら?



 ドッドッドッ


「・・・おい」


 はいぃぃい!? なんでしょうか!?


「・・・はい、なんでしょう」


 目は伏せて振り返る。

 努めて落ち着いているが内心は荒ぶっていた。

 誰か助けてえ!


「・・・っ! いや、用ってほどじゃないんだがすまない・・・」


 私は大きく目を開いた。

 あの噂は本当だったのか。

 女の扱いが変わったという噂は。


「・・・どうした?」


「いえ、随分とお変わりになられたなあと思いまして」


「! あ、ああ。ある人に教えられてな」


「それって」


「ああ、来たばかりだというのにあっという間に軍師になられたヴァイス様だ」


 わ・た・し・じゃん!


 え? 下剤盛った人ですよ?

 態度はなおしてほしかったけど様付けって何?

 ってか前、殺気飛ばしてたでしょ!?


「ヴァイス様は真面目な人だ、いつも必ず訓練の指導をし自身の部隊の一人一人に声をかけて目と目を合わせて話す。本人は謙遜な態度だが軍内では一番強いんじゃないかって思ってる、そして」


「わあーっ! わ、分かりました! 分かりましたからそこで止まって下さい!」


 顔から火が出るほど熱かった。

 なんなんだ、なんなんだよ、この人は。

 あと女嫌いじゃなかったのかよ!

 こんなに熱くベラベラ語る奴って知らなかったよ!


「あ、アナタがそのヴァイス様に尊敬してるのは分かりましたから!」


「尊敬?」


「え」


 あ、これ自分で言って恥ずかしいパターン?


「寧ろ崇拝の域だが」


 ボンッと火が吹くように熱くなった。

 な、なに言ってるのこの人は・・・!


「君、見てたんだろ」


 サアッと顔が青くなる。え、バレていたの私の正体・・・。


「ヴァイス様」


 だ・か・ら! どうやって私が私を見るの!

 どうやったら見れるのか! 知りたい、本気で。


「ここの所君を見かける事が多くなってな、やっと確信が付いた」


「え」


 嫌な予感がする。ってかマジでやめてくれ・・・!


「君、ヴァイス様が好きなんだろ?」


 あはは、内心乾いた笑いが響いた。


 なんで私が私の事を好きになってるの?

 

 


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