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第一話 野心の目覚め

 組織からスパイとして敵組織に潜入しその敵組織から組織をスパイするよう雇われる。

 言わばダブルスパイ。


 スパイする者は両者の情報を握りながら有利な立ち回りを求められ、最終的に脇役なら死ぬ場合があるが、ダブルスパイをする者は視聴者から人気が高かった。


 その曲者感が視聴者の心にぐっとくるものがあるのだろう。分かるよ。凄くわかる。


 私はコメディのダブルスパイが大好きだった。

 死ぬわけではないが二つの顔を持つ女主人公にぐっときた。


 そして今世の私、ヴァイオレット。

 ダークエルフの十歳。

 私はファンタジーは詳しくは知らないが、ダークエルフは魔王の側近を選ぶ際ダークエルフから何名か優秀な魔導士を取るらしい。


 ピンときた、きてしまった。


 ダークエルフは魔物で稀な知性を持つ。

 そして私の前世は人間である。

 これを活用しない手はない。


 窓ガラスに写った自分がニヤリと悪巧みを考えてるような笑みをした。



 まず私はダークエルフから認められるべく魔術を全てマスターし指導者になるべくとして実戦経験を積み重ねていく事を目指した。


 そして徐々に頭角を表し魔王の側近へと選ばれるべく根回しにとダークエルフの長や指導者たちから推薦状を送らせ勿論私は謙遜な態度は崩さないようあくまで対人間という構図に奮起する知的で冷静、そして落ち着きのあるダークエルフを演じた。


 内心は早く人間界に行き両者から必要とされるスパイになりたかった。


 魔王の側近に選ばれて二ヶ月間。その頃には十五歳を過ぎていた。

 人間の小さな集落を陥落し、乗り気ではないもののそうは言えずに軍師として相応しい姿を演じ続ける。


 このままだと人間側が滅びてしまう予感に、私は魔王に進言し人間界に行きの諜報部隊を率いる隊長に任命される。


 私はあらかじめ魔王に説明した通り肉体改造魔法を行い人間へと姿を作り替えた。


 ダークエルフという存在感のあるものを消し去り王国へと潜入し情報を流すと魔王と魔法で契りを交わした。


 人間界の王国へと降り立つと漫画みたいな世界がそこにはあった。


 王子や貴族制度がそのままあり腐敗と特権階級への憎しみと差別がそこにはありありとうつっていた。


 私はギルドへ登録し、瞬く間にSランクへと駆け上がり規格外冒険者として名を馳せる。


 私は周りの振る舞いは徹底していた。

 少し抜けたところはあるが非の打ち所がない明るい性格。

 そして常識人として周りから扱われるのにそう時間はいらなかった。


 魔王の側近として討伐クエストのボードに貼られた紙を逐一見逃さずその魔物に警戒するか逃亡するかを教えまたは知性が低いなら警告事態行わなかった。


 そのかいあってかクエストは採取クエストが多くなり冒険者が困る様にほくそ笑んだ。


 そしてついに王様からお呼ばれし依頼された内容に飛びついた。


 辺境に嫁ぐ姫様の護衛。


 私はすぐさま魔王に伝え、護衛役を途中まで真っ当した。


 姫様は賢く知的だった。

 信頼を得るため、わざと強い魔物を送り込み全てはダブルスパイとして両者から必要とされるために仲間の魔物に一部極秘命令を聞かなかった者だけ重症を負わせた。


 魔物との鍔迫り合いの最中に魔物全体の精神に囁きかける。


 ーーこれは茶番だ。人間側への信頼を得るための。


 魔物は魔物の精神に同調するための特殊な周波数がある。

 それは魔物同士でなければより強い魔物でしか魔物に語りかける事は出来ない。

 弱い魔物から強い魔物に語りかける事はできない。


 それに反発する意思を持つ魔物は鼻から魔王に対し不信感を持って産まれたやつくらいである。いて良かった。まあ殺すけどね。



 姫様は私の腕を認め側近の女騎士へと仕立て上げた。


 嫁いだ先もまた良い。帝国で軍事力をあげている辺境な地だ。


 魔王にとって最大の敵になるだろうと予感し、すぐさま連絡をしようとした手を止めた。


 待てよ。帝国内で地位をあげたらしかめっちゃなぐらいぐちゃぐちゃにならないか? と。


 早速、姫様護衛の女騎士兼帝国での姿、変身魔法で男になり王国の情報を持って帝国兵にフリーランスの傭兵だったとして志願する。


 だが帝国は甘くはなかった。


 人間に作り変えた身体が悲鳴をあげるほど地獄な訓練。それを難なくこなしていると見せかけるための演技。


 帝国の技術は前世の私が漫画で見たああ、こういうパターンもあるよねという非人道的な技術の結集と調教されにされた兵士たち。


 私は帝国兵で時間はかかりはしたものの認められつつあった。信頼を勝ち得てさらなる地位向上を目指し軍師を目指す。


 部隊長になる頃には魔物の生態系への研究履習を頭に叩き込まれたあとだった。そうか、ここはゲームの世界かと転生先に今更気付いたが別にゲームが現実になっただけで対してショックはなかったが。


 だが姫様の様子がおかしいことに気づいてしまう。

 そうか姫様は乙女ゲームでいう邪魔者で正妃ではない。

 それにどうやら恋をしてしまってるらしい。


「氷の騎士、ですか?」


 困ったなと女騎士の姿で、姫様の前での姿で頭に手をやる。なにぶん恋愛には疎いもんで。


 ダブルスパイであるがスパイ先の姫様の恋ぐらい応援しても良いだろう。


 月一に王国からの手紙が届く。

 私は王国の情報を諜報部隊から仕入れ、帝国の情報は自力でかき集める。


 帝国での味方はいない。


 配下の魔物は優秀で知性ある魔物なら助け、そうでない外れた魔物には討伐されようがのさばろうが無視を決め込んでいた。


 配下の連中も最初の頃は精神同調は使えない下級の部隊だったが、魔王様からも見放されていたとは言え私に任された部隊であった。


 だから私はレベルを底上げするべく根気強く付き合い、私以外のものの命令は聞かないほど懐いてくれた。


 だからあの部隊の魔物が好きだった。


 今ある配下は帝国の皇帝陛下に不信感を抱けばそくブッチな戦闘狂の壊れた連中だが、メンタルのケアさえちゃんとしていればいずれ私に懐くだろう。



 問題は姫様だ。


 氷の騎士と呼ばれる、皇帝陛下の息子ギルバート=F=リリィクァ。


 彼は、女嫌いで有名だった。

 近づく女に肩でぶつかる様を見て倒れた淑女を一瞥し見下す様はなんとも気分が悪い。

 それを彼の側近であるいずれは宰相候補と名高いヨシュア=イグゼクトロワ。彼が手を差し伸べるため人気はこの二人に集中していた。



 ・・・乙女ゲームの攻略対象ってところだろう。姫様は毎日のように彼等をウォッチングしては溜息を吐くばかり。


 アンタ嫁いだ相手どうする気だよ。


 まあ嫁ぎ先も攻略対象で姫様を邪険にする聖女ヒロイン大好きな女狂いだが。


 正妃も聖女ヒロインは嫌いで姫様と手を取り合いそうな段階まできている。


 このままだと正妃は断罪、姫様は国外追放すらあり得る。


 私は姫様の恋心を邪魔するべく、帝国で取る姿、男の姿で氷の騎士に決闘を挑んだ。


 大丈夫。根回しはしてある。


 彼の胃の中には昼に取る紅茶に大量の下剤を混ぜたものを混入してある。


 決闘の試合前。青い顔をしながら腹を片手でさすり人が見ているなか決闘の開始直後、彼は木刀を放り出し逃げ去った。


 場所はトイレに向かっているだろう。


 私は周りから軍師は厳格で冷静な対応する振る舞いをしていたが、剣を一本交えたい。ただそれだけでは審判は引き受けないと分かっており淑女への態度の悪さを盾に審判を引き受けてもらった。



 審判はこの試合に激怒した。

 挑まれたとは言え、木刀を放り出し逃げ出した男に対して。そして氷の騎士と欲しいまま言われた不遜な態度に対して。


 私は内心狡猾な笑みでいっぱいだった。この時十八歳である。


 このまま残りの攻略対象を刈り取ろうと決意した。

 

 

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