第9話 お化け屋敷
「キャー」
やっぱり高橋が叫んでる。それも俺の腕を持って離さない。まあ掴んでいるだけならいいけどだんだん握るのが強くなってきてる気がする。
「あ、痛いたい。高橋タンマタンマ」
「嫌だ、こんな所で止まりたくない」
うん、怖がらせるのはやめとこ。俺の腕がちぎれる。
「おっけ、進も。でもちょっと力弱めろ」
「あ、ごめん」
「いいよ、てか怖くないの?」
「怖いさ。でも隣でこんなに叫んでる人をみるとね…」
「あー、あれね。って、キャー」
あ、腕だけじゃなくて耳までやられる。そういえば、先に入った2人の叫び声が聞こえんな。それとも、それだけ離れてるんだろうか。
「うわ、」
俺は尻もちをついてしまった。
「ねえ、たかどこ?」
泣きそうな声で高橋が探している。
「はぁ〜。下だよ、下」
「もう、急に引っ張られたかと思ったらいなくなっちゃうんだから。離れないでよね」
「あんな泣きそうな声だったのに?」
「それはそれ、これはこれ」
「はいはい」
そんな事を喋りながら歩いていると出口が見えた。
「わーい、脱出。思ったより怖くなかったね」
「あんなに叫んでたのに?」
「まあまあ、記憶を消したまえ」
出た所から近いベンチで2人は座ってた。神田さんはぐでってる。よほど怖かったのだろう。
「ただいま」
「おかえり」
「神田さんは?」
「途中でくじいちゃって、スタッフの人に運んでもらった」
なるほど、怖がらないから叫び声が聞こえなかったのか。
「神田さん、大丈夫ですか?」
「大丈夫大丈夫、スタッフの足にたまたま引っかかってこけちゃった」
「怪我は無さそうだし、良かったです」
「まあね、だてに運動はしてないから」
へぇー、神田さん何やってんだろ。弓道かな。
「さあ、次はどうする?」
「うーん、ちょっと早いけど飯にする?どうせこむんだし」
あ、もう11時を超えてた。楽しい時間は速くすぎてく。
「そうだね、どこ行く?」
「あそこの飲食店がいい」
「あ、知ってる!有名だよねぇ」
女子がキャッキャしてる。
「神田さん、知ってます?」
「知らない。ここ初めてだし」
「ですよね笑」
俺と神田さんはバーガーを頼んで、なんか女子は映えそうなのを買ってきた。
「これ、美味しそうだったし可愛いってずるいよね〜」
「ほんとにそうよね〜」
「思ったより、このバーガーでかいね」
「はい、なんか写真よりでかいですね」
男子と女子の間でものすごい温度差が生まれてた。
「昼飯の後どこいく?」
「うーん、どこがいい?」
「観覧車は乗りたいよね」
「そうだよね」
「そういえば、遊園地でたところがショッピングモールになってたよね!」
「うん、なってたよ」
「なら行こ!」
「ほな、その前に観覧車いこうぜ」
「あ、じゃあ次は私が充さんと。石田はななかちゃんと乗ろ」
「おっけー。行こ」
密室に元カノと2人かぁ。気まづいな。俺以外は軽い足つきで進んでいく。はぁ。何話せばいいんだろう。
「ねぇ、たかちゃん。観覧車入ったら話したいことがあるんだ」
「お、おう。とりま行こうぜ」
あぁ、気まづいな。